GLIM SPANKYは11年前、松尾レミが高校時代に仲間を募って作ったバンドだ。メンバーの入れ替えはあったものの、亀本寬貴とふたりで地道に活動を続け、4年前にメジャーデビューを果たした。その半年後、最初にインタビューしたとき、松尾はこう言っていた。
「根拠のない自信がありまして、中学生の時にギターを始めた頃から、計画表を作っていたんです。何歳でオリジナル曲を書く、何歳で下北沢でライブする、何歳でメジャーデビューするって。今のところ全部、それを実現させています。大学4年でメジャーデビューって、計画通りなんです」
 だったら、武道館ライブも計画表に入っていたのでは? だって武道館は、ロックアーティストの聖地。1966年にビートルズが日本公演を果たし、1986年にBOOWYの氷室京介が「ライブハウス武道館へようこそ!」と叫んだ場所だ。ここで演奏し、客をわかせることは、ロックを志す者の夢なのでは?
「それが、武道館は計画表には入っていなかったんです(笑)。もちろん、最高のロックバンドたちが演奏してきた歴史ある場所なので、いつかはやりたいと思っていましたけど」
 どうやら彼らには、それよりも大事なことがあったらしい。『ブレない』ということだ。
「たとえばメジャーに流されるとか、売れるために自分たちの音楽を変えなきゃいけないとか、スカートを短くするとか(笑)。そういう妥協とか変節なしに、ずーっと自分たちの好き勝手に、自分たちのスタイルで自分たちがやりたい音楽のまま、武道館でやれることになった。それが本当に最高のことだと思う。うれしいです」
 それでもやっぱり武道館は、ある種のマイルストーンに違いない。
「今回、ほっとしたのは、自分たちの気持ちが以前と全然変わっていないことです。デビュー当時に私、ライブの会場が大きくなっていったときに、そこで満足してしまう自分がいるんじゃないかと、怖かった。でも、いざ武道館が実現した今も、全然鼻高々じゃない(笑)。まだまだこれからだ、まだ序章だって思い続けている。そういう自分たちに安心しました」(松尾)
「武道館でライブするくらいのバンドって、もっとすごい生活してると思っていたんですけど。めっちゃモテると思っていたし。でも、全然ふつうだし、全然モテねえ(笑)。このくらいじゃ変わらないんだなって。もっとデカイところまで行かないと変わらないんだなって思います」(亀本)

  • 出演 :GLIM SPANKY グリム・スパンキー

     松尾レミ(Vocal・Guitar)と亀本寬貴(Guitar)による男女2人組ロックユニット。2007年、当時通っていた長野県内の高校にて結成。2009年コンテスト『閃光ライオット』でFinalに進出。2014年6月ユニバーサルミュージックVirgin MusicVirginMusicより1stミニアルバム『焦燥』でメジャーデビュー。松尾レミがカバーしたジャニス・ジョップリンの『MOVE OVER』がCMで流れて大きな反響を呼び、注目を集めた。1960~70年代の本格的ロックとブルースをベースに骨太なロックを展開。ライブ活動を続ける一方、数多くの映画、ドラマに楽曲を提供し、CMでもカバー曲などを歌唱。松尾の独特の歌声と亀本の卓越したギター演奏は、幅広い年代のロックファンに支持されている。

    HP http://www.glimspanky.com/about/

    YEO ARCHIVE
    Part1 2015年2月16日~20日
    Part2 2015年7月20日~24日
    Part3 2016年5月9日~14日

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/