ファイティング・スタイルが攻撃型に変わったのは、6度目の防衛戦から。
「2ラウンドで相手を倒したら、お客さんがすごく喜んだので、ああ、倒したら湧くなって。あと、2ラウンドで終わったら自分も楽やからね。同じお金もらえるのに、早よ終わらしたら楽やなって(笑)。そこからは5試合連続、早い回でKOでしたね」
 もちろん、そのために日々、自分を鍛え抜いていた。
「僕の練習量は多分、トップクラスだと思います。世界一練習してるという自覚はあります。でもそれは、他人と比べることじゃない。実際、僕より練習してる選手はいるかもしれない。でも自分が世界一練習してるって思えるのなら、自分が頑張れるところまでちゃんと頑張っているなら、それは世界一練習してることになるんですよ」
 メンタルも、鍛えた。
「試合前僕は、勝てると思ってないです。勝つかもしれへんし、負けるかもしれへん。勝つと思い込むイメージトレーニングなんて、所詮自己暗示ですから。リングに上がったら、勝つ確率は50%です。だからその前に後悔のないトレーニングをして、勝っても負けても悔いのない状態を作らないと、良い試合にはならないんです」
 2010年、WBC世界バンタム級王者の11度目の防衛はならず。その後WBC世界フェザー級王座決定戦に勝つ。だが4ヶ月後の初防衛戦に敗れた。
「結果がすべて。俺のほうが弱かったから負けた。それだけです」
 言い訳はしない。そこからは無冠のまま、5年という月日が過ぎた。
「どうやって自分のボクシング人生を全うして終わろうか、ずっと終わり方を考えていました。周りからは〝もうええんちゃうか?〟って言われましたけどね。もう十分だろうって。でも僕ね、人と同じなのがイヤなんです。人に言われたら逆のことしたくなる(笑)。もっとやってと言われたら、辞めていたかもしれない。もう無理やって言われたからよけい、『いやいや、本気で、気持ち入ったらまだまだ強い』っていうのを自分が見たかったんです」

  • 出演:長谷川穂積  はせがわ ほづみ

    1980年生まれ。兵庫県西脇市出身。168.5㎝。サウスポー。真正ボクシングジム所属。1999年11月プロデビュー。2005年4月、プロ20戦目の世界初挑戦で王者ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)を倒し、WBC世界バンタム級チャンピオンになる。その後10度の防衛に成功し、世界王座に5年間君臨した。2010年4月王座から陥落したが、同年11月WBC世界フェザー級王座を奪い取る。2016年9月、WBC世界スーパーバンタム級王者となって3階級制覇を達成。同年12月ベルトを返上して現役引退を表明した。
      

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/