本当に強い男は、軽やかだ。
自分が強いことを知っている男は、静かだ。
長谷川穂積は軽やかで、静かで、圧倒的な存在感がある。
昨年12月9日、長谷川は現役から退くことを表明した。彼はWBC世界バンタム級チャンピオンとして10度防衛、3階級制覇という偉業をなしとげたすごい選手。5年半にわたる無冠の季節を過ごした昨年9月、WBC世界Ｓバンタム級の世界チャンピオンになって世間をあっと言わせ、その3ヶ月後に引退を決めたのだ。
17年間の、潔くて鮮やかで、見事なボクサー人生。いったいどんな人なんだろう？　
ちょっとビビリながら挨拶を交わした彼は、スーツをさらっと着こなした、人当たりのいい優しい男性だった。中肉中背、ちっともゴツくないし、手にも顔にも傷はない。
「昔はボクサーと言えば、けっこうボロボロになるイメージあったじゃないですか。でも僕はあまりパンチもらわなかったし、まったく顔にダメージ残らなかった。試合後にかっこ良く傷だらけになってみたいなって、そういうのに憧れた時期もありましたけどね(笑)」
　なんかちょっと、次元が違う？　ビッグマウスというわけでもなくて、天然とも違う。努力を積み重ねて手に入れた強さを、さらっとラフに着こなしているような。
油断してるとノックアウトされそうな今週のＹＥＯは、金曜日まで連日更新の５ラウンド。長谷川穂積のあんな面やこんなトコに迫りたいけど、パンチを避けるの巧いんです、この人。