闘う女は美しい。なにかと真っ向勝負する経験と時間は、女を磨くのだ。
 今週のYEOに登場するのは正真正銘の武術系美女、山本千尋。
 3歳から太極拳を学び、小学生時代から海外で開催されるJOCジュニアオリンピックカップの長拳、剣術、槍術部門で優勝を重ねて来た。

「両親が、一時期ジャッキー・チェンにハマったらしいんです。そういう世代なんですね。父はヌンチャクを小脇に抱えて公園に行き、練習していたらしいし(笑)、母も最初に見た映画が『プロジェクトA』だったとか。そんなふたりが住んでいた家の近所にたまたま武術の稽古場があり、面白半分で娘の私を通わせたんです。私も、最初は遊び感覚でしたけど、小学校に上がった頃から武術がスポーツだと知り、順位を競うものだと理解し、上手になりたいと思い始めました。メダルが欲しい、人に負けたくないという気持ちがだんだん強くなって、最終的には週に6日、練習に通いました。練習しないと、大会で優勝できませんから」

 中国武術を習う子どもたちの数は、日本でも数千人に上るとか。国内の試合で勝ち上がるだけでも、楽じゃない。

「試合では、アドレナリンがすごく出るんですけど、緊張とか不安は感じたことがありません。試合前はいつもワクワクしていて、早く演舞をしたい、と思うだけ。全力でいけば絶対に優勝できるって、自分に言い聞かせていました」

 一時期は国内に敵なし、という状況だったけど、天狗にはならず。

「試合中にひとつでもミスをしたら、それだけで私は最下位になるかもしれない。審判の人たちに、この前の大会と比べて成長していないと思われるのは悔しい。だから常に上を上を、目指していました。逆に国際大会のほうが、日本を背負ってはいるんですけど、思い切り自由にできたような気がします」

 自己鍛錬の日々が13年間続いて、負けん気と度胸と実力を兼ね備えたひとりの女の子ができあがる。そして16歳のとき、山本千尋はある決心をした・・・・。
 ここから先は、明日からの記事をお楽しみに!

  • 出演:山本千尋(やまもと ちひろ)

    1996年8月29日生まれ。兵庫県出身。3歳から太極拳を始め、第4回世界ジュニア武術選手権大会・槍術部門で金メダル、ほか銀メダル2枚を獲得。2014年『太秦ライムライト』ヒロインで映画デビュー。2015年舞台『新選組オブ・ザ・デッド』でもヒロインを演じた。2016年、キングダム連載十周年実写特別動画に羌廆(キョウカイ)役で出演、12月公開の映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』、2017年1月13~15日の舞台『海賊と山賊』など映像・舞台に活躍が続いている。

    オフィシャルサイト http://www.queens-ave.com/talent/chihiro-yamamoto/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/