8月の3次審査時に撮影した7人の写真と今の顔を見比べて、驚いた。以前の顔には幼さが残っているのに、たった2ヶ月で劇的にみんな、成長している。最終候補者7人に絞られて、ビリーに選ばれたいという気持ちが強くなったのかもしれない。顔付きがしっかりして、プロフェッショナルな気配すら感じる。ひとりひとりがこれからどんどん、ビリーになっていくのだろう。

 工藤結太クン(左)は、バレエ歴9年。もともと映画『リトル・ダンサー』が大好きで、この企画を聞いてすかさず、応募したという。 

 廣瀬喜一クン(右)は、今年の1月からバレエを始めたばかり。通っているスタジオでオーディションを知り、自分から応募を決めた。

 ふたりともニコニコ笑顔が印象的、元気で明るいムードメーカーだ。

「どうすればお客さんたちに感動してもらえますか?」という質問をなげかけてきた彼らに、リアムはこう答えた。

「ビリーという役は、すごく特別な役です。僕自身、まるで自分みたいだなと思えるところがすごく多かった。物語にしてもキャラクターにしても、僕もそうだ、と共感できるんです。だから演じるときには、どんどん自分自身を足していくことができる。僕もそうしてみたら、どんどん演じるのが楽になりました。みんなも実際に、ある意味ビリーを生きているんです。お客さんにもそれが見えて、だからよけいに感動してくれるんだと思います。だから楽しんで。とにかく楽しんで。みんなの幸運を祈ってます」

 確かに。ビリーはバレエ男子への偏見や、どうしようもない貧困、暗い時代背景の中で、自分の夢を実現していこうともがく男の子の物語。作品には同時に家族愛や友だちの大切さ、運命に流されることなく生き抜く、強い意志も描かれている。時代や背景は違っても、未来に向かって歩き出そうとする7人の姿は、ビリーに重なっている。

7人の中からビリーに選ばれるのは、いったい誰なのか? すでに物語は、始まっている。

  • 出演:『BILLY ELLIOT』(ビリー・エリオット)

    ミュージカルビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
    英国発の大ヒット・ミュージカル。本作は『リトル・ダンサー』の邦題で上映された映画『BILLY ELLIOT』をミュージカル化した舞台。2005年5月にロンドンで開幕し、10年以上ロングラン上演され、現在もツアー公演中。日本は来年の夏から秋にかけて、東京(TBS赤坂ACTシアター)と大阪(梅田芸術劇場 メインホール)で公演予定。

    [あらすじ]1984年、イギリス北部の炭鉱町で育ったビリーは、父親の勧めでボクシングを習っていたが、ある時、隣の教室でやっていたバレエ教室に心惹かれ、こっそりと習うようになる。当時は女の子のためのものとされていたバレエに夢中になっていくビリーは教師に認められ、名門「ロイヤル・バレエスクール」のオーディションを受けるよう薦められる。男手一つで息子を育ててきた父は、男は逞しく育つべきだと強く反対していたが、ある晩ビリーが一人踊っている姿を見てビリーの溢れる情熱と才能、そして”バレエダンサーになる”という強い思いを知り、何とか夢を叶えてやりたい、自分とは違う世界を見せてやりたい、と思うようになる。
    家族との軋轢、亡き母親への想い、祖母の温かい応援。度重なる苦難を乗り越えながら、11歳の少年ビリーが追い求める夢は家族全員の夢となり、やがて街全体の夢となっていく・・・

    [公演情報]

    2017年
    7月中旬~10月上旬 〈東京〉TBS赤坂ACTシアター
    10月中旬~11月上旬 〈大阪〉梅田芸術劇場 メインホール
    オフィシャルサイト http://www.billyjapan.com/

    公式twitter @Billy_Japan
    音楽 エルトン・ジョン
    脚本・歌詞 リー・ホール
    演出 スティーヴン・ダルドリー
    主催 TBS ホリプロ 梅田芸術劇場
    Billy Elliot the Musical worldwide is produced worldwide by Universal Stage Productions, Working Title Films and Old Vic Productions and is based on the Universal Pictures/Studio Canal film.

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/