大学に進学した彼女は歌舞伎の勉学だけでなく、役者の勉強も始めた。

「割と凝り性なので、理論だけでなく実践もやってみようと学生劇団に入ったり、文学座の養成所にも通いました。文学座の養成所は年に何度か発表会がありまして、そこで芸能事務所の方に『時代劇とか興味ない?』って声をかけられまして。『興味あるどころの騒ぎじゃないです!』ってその芸能事務所に入ったんですけど25歳の時に事務所が潰れちゃって(笑)」

 役者としては時代劇デビュー。江戸文化歴史検定一級を最年少で取得。江戸に詳しすぎるアイドル、お江戸ルほーりーとしてバラエティ番組にも多く出演した。また2011年に初の著書「TOKUGAWA15~徳川将軍15人の歴史がDEEPにわかる本~」(草思社刊)を出版。マルチな才能を持つ女性タレントとして注目を集めた。

「もともと活字が好きなので書く仕事がしたかったんです。役者は台本があって、監督が見せたい世界を自分がどう表現できるかという、言うなれば究極のMの世界だと思うんです。逆に書く仕事は自分が軸になって攻められる媒体。いつか自分で書く仕事がやりたいなと思っていました。
 事務所が潰れてしまってホームページがなくなってしまったのがきっかけで、自分でブログを書き始めたんです。そうしたら出版社の方から『うちで本書きませんか?』っていう流れで」

 この初の著書では文章だけでなく将軍の肖像画などすべての図版、イラストも本人が描いている。もちろん文章も面白い。歴史に詳しくなくても、誰にでも楽しめる、手に取りやす内容なのだ。しかしながら、巻末の参考文献一覧には57冊もの文献が列挙されている。一冊の本を書くことに対し、彼女は57冊の本を読みこんでいるわけだ。
 撮影しながら歩いている時、彼女はこう言っていた。

「いつも着物を着ているから真面目に見られるんですけど、私ただのオタクなんですよ」

 実際凝り性でオタク気質がなければ、膨大な歴史書を読み歴史本など書けないだろう。だが決して不真面目ではないはず。江戸文化歴史検定1級取得者に不真面目な輩がいるわけない。
また、オタク気質は趣味がアニメというところにも現れているようだ。

「歴史と同じくらい二次元が好き、アニメが好きなんです。仕事をするなら歴史かアニメかと思っていたくらい。一冊目の本の時、将軍の有名な肖像画を使いたかったんです。出版社の方に問い合わせてもらったら、高額な使用料を支払わなければならないのがわかりまして、それは無理だと。『じゃ、私描きます』と。上手くはないですけど味が出て結果良かったかな」

ちなみに大のガンダム・ファンでロボット・アニメ全般大好きとのこと。新作アニメも毎クールごと話題の作品は一通り観るという。

「時代劇を観るのは仕事になってしまっていて、純粋に楽しめなくなってしまいました。今、純粋に楽しめるのはアニメしかないんです。観ている時がホントにオアシスなんです」

  • 出演:堀口茉純(ほりぐち ますみ)

    1983年6月11日生まれ、東京都足立区出身。女優、タレント、歴史の水先案内人、通称ほーりー。江戸文化歴史検定1級、英語技能検定2級、中国語検定3級、ドラえもん検定博士号。趣味はアニメ、漫画鑑賞。アニソン熱唱。コスプレ。

    オフィシャルサイト http://hoollii.com

    レギュラーイベント

    UKIYOEナイト(毎週第四木曜日)
    場所:浅草 アミューズミュージアム
    時間:会場18時、開演18時30分
    チケット:前売り1620円、当日2160円
    オフィシャルサイト http://www.amusemuseum.com/blog/2011/07/ukiyoe-night.shtml

    新刊本

    「江戸はスゴイ~世界一幸せな人々の浮世ぐらし~」
    9月16日発売 PHP新書 定価880円(税別)

     

  • 取材/文:横田一郎

    お江戸とロックと酒と猫とサイクルロードレースが好き。好きな時代劇は「御家人斬九郎」。飼い猫の名前はコンタドール。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/