一つのことを突き詰めていくと、そのうちそれにまつわる様々な事象にも興味がわいてくる。この知への探求心は次なるターゲットを見つけた。14代将軍、徳川家茂だ。

「新撰組を中心に幕末を調べていくうちに、新撰組が作られたきっかけになった徳川家茂が気になりだしました。家茂がどういう人だったのか全くわからない。家茂に関する研究本は一般向けに出ていないんです。彼のことをどうにかして知りたい。それで日比谷図書文化館に行って、増上寺にある徳川家の霊廟発掘調査の記録を読んだんです。その中に家茂の遺骨の記録が出ていて『これだ！』と。骨や髪の毛の分析記録が載っていて、虫歯が30本あったんです。どういう人生を送ったら虫歯30本なんてことが起こり得るんだろう？　で、よくよく調べると甘いものが好きだったり、ストレス体質だったということがわかりました」

　皆さん、いいですか、この段階で彼女は中学生ですよ。磯田先生もビックリだろう。

「それまでは誰かによって書かれた歴史が面白いと思っていました。中学生になってから、考古学的な資料の原本にふれて自分なりの史観を持って歴史を見られるようになりました。そうすると歴史がさらに楽しくなることに気が付いたんです」

　中学生の女の子が独自の歴史観を持つことの楽しみを覚えた。開いた口がふさがらないとはこのことではないでしょうか。もう歴史家の道まっしぐら、　と思ったら彼女はとんでもない事を考えていたのです。