文字情報としての歴史だけにとどまるはずもなく、当然ながらビジュアル方面にも手を出す。動くお江戸エンターテインメント、歌舞伎だ。これが興味を持ったどころではなく…。

「中学高校の時、歌舞伎にドハマリして歌舞伎役者になろうと思いました。子供だったので頑張って出来ないことはないと思っていて、本気さが伝われば入れてくれると信じていました。周りにも『高校卒業したら歌舞伎役者になるから』って言っていました。高校の進路相談の時先生にそう言ったら『じゃあ願書もらってきなさい』ってニヤニヤしながら言われまして(笑)。
 それで国立劇場に行って『入りたいんですけど』って言ったら『え? どういう意味ですか?』って言われまして。これはダメなんだと思ったのですが諦めきれず歌舞伎役者さんにも直談判しに行きました。『私歌舞伎が好きで、歌舞伎の世界に入りたいんですけど!』って言うとだいたいファンだと思われて『ありがとね』って体よく追い返されました。でも当時の市川猿之助さん、現在の市川猿翁さんだけは『頑張りなさい!』って言ってくださったんです。これは頑張らねばと思いました。
 日本の歴史、文化を結晶させたものが歌舞伎だと思っていて、歌舞伎が凄く面白いということを伝えたいと思ったから歌舞伎役者になりたかったんです。でも役者にならなくても伝えることはできる。で、大学では歌舞伎を研究勉強して日本の歴史、伝統を伝える仕事をしようと」

 役者さんに直談判! 正面からぶつかっていくその根性だけでも凄いが、それがダメだとわかっても諦めない。正面がダメなら搦め手から攻める。それで明治大学文学部に進学。演劇学を専攻し歌舞伎について学んだ。

 この諦めない姿勢が彼女のコアな部分ではなかろうか。上の写真は通りかかった金魚すくい屋さんで撮影した一コマ。金魚すくいをしながらニコッと笑顔な写真。ものの1分で済む撮影だが、彼女は金魚すくいに夢中になりだした。「えー、ぜんぜんすくえない~❤」と言いながらだんだん目がマジに。延々と金魚すくに熱中しだした。その後ハギニワケイタが言った一言が。

「意外としつこいな」

 なんと無礼な。何事にも一生懸命と言え!「久しぶりにやったら面白かったあ~❤」とおっしゃる彼女。面白いと思ったらすぐ熱中するタイプ、それが新撰組でも徳川家茂でも歌舞伎でも金魚すくいでも。このしつこさ、じゃなくて興味を持ったらのめり込むところが彼女の持って生まれた最大の武器ではないだろうか? 何年か後、彼女は金魚すくいの世界チャンピオンになっているかもしれない。

  • 出演:堀口茉純(ほりぐち ますみ)

    1983年6月11日生まれ、東京都足立区出身。女優、タレント、歴史の水先案内人、通称ほーりー。江戸文化歴史検定1級、英語技能検定2級、中国語検定3級、ドラえもん検定博士号。趣味はアニメ、漫画鑑賞。アニソン熱唱。コスプレ。

    オフィシャルサイト http://hoollii.com

    レギュラーイベント

    UKIYOEナイト(毎週第四木曜日)
    場所:浅草 アミューズミュージアム
    時間:会場18時、開演18時30分
    チケット:前売り1620円、当日2160円
    オフィシャルサイト http://www.amusemuseum.com/blog/2011/07/ukiyoe-night.shtml

    新刊本

    「江戸はスゴイ~世界一幸せな人々の浮世ぐらし~」
    9月16日発売 PHP新書 定価880円(税別)

     

  • 取材/文:横田一郎

    お江戸とロックと酒と猫とサイクルロードレースが好き。好きな時代劇は「御家人斬九郎」。飼い猫の名前はコンタドール。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/