映画祭が開催されているこの期間、釜山は映画祭一色になる。あちらこちらで関連イベントが開かれ、人気俳優が出没するものだから、町全体がお祭りムードだ。海沿いの遊歩道でもストリートミュージシャンたちがミニ・コンサートを開いている。夜になると一流ホテルの宴会場やイベント会場で、パーティ三昧。映画関係者が飲んだり食べたりしながら国籍を超えて交流できるとあって、その活気はものすごい。富名夫妻も連日いろいろな集まりに顔を出して、精力的に自分たちと作品を売り込んでいた。

「いやー、マッコリって美味しいけど、意外と効きますね。なんか二日酔いで」

 で、今回の映画祭の手応え、いかがでした?

「僕、いろんな脚本書いているんです。2年前に釜山で選ばれた作品はアート系だと思う人もたまにいるんですが、実はコメディなんかも得意で、映画にしたい話はいっぱい持っている。けっこう振り幅が広いんです(笑)。でも今回の作品『SMOKE ON THE WATER』は僕にとって最初の長編映画で、今後の活動に向けて名刺代わりになる作品でもあります。素直に〝これが僕です〟と言える作品になるでしょうし、完成した時点で初めて、この先自分がどこに向かうのかが、見えてくるはずです。だから今の自分はこれなんだ、という作品を、真摯に作りたい。釜山国際映画祭はそんな僕たちをこんなに応援してくれているんですから、頑張らないといけませんよね!」

  • 富名哲也(とみな てつや)

    北海道釧路生まれ。イギリスに留学。London Film Schoolで映画製作を学ぶ。2013年に製作した短編映画『終点、お化け煙突まえ。』が釜山国際映画祭のコンペ部門に選出されたのを始め、インドネシアの映画祭、セルビアの映画祭などで受賞。現在までスペイン、スイス、コロンビア、米国、中国ほか、世界10カ国以上の国際映画祭に正式招待され、2015年2月ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映された。またイタリアのヴェネツィアで開催された現代美術展『未完風景展』でも約5ヶ月にわたり、展示上映された。そして2015年、オリジナル長編脚本「SMOKE ON THE WATER」が、釜山国際映画祭アジア・シネマ・ファンドの脚本開発部門にて日本から初選出されている。

    オフィシャルサイト  http://tetsuyatominafilm.com/

    畠中美奈(はたなか みな)

    鹿児島県生まれ。大学卒業後、(株)久米設計の設計室に勤務。プロレスラー高田延彦率いるUWFインターナショナル広報・企画部長を務めた後、1998年長野パラリンピック冬季競技大会閉会式制作チーフ、『管野秀夫Dearest Musicians』の企画制作、『 hide(元 XJAPAN)写真集』制作、松田優作13回忌の全プロジェクト、松田龍平のマネジメントなどを経て、結婚後は富名哲也氏の監督作品を企画・プロデュースしている。

    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/