富名監督のそばには、常にプロデューサーの畠中美奈さんがいる。畠中さんは旧姓のまま仕事をしているけれど、ふたりはれっきとした夫婦。それも、かなり仲の良いカップルだ。畠中さんは、夫の富名さんを熱烈に支持している。

「本人、こんなこと言ってますけど、私にはこの人がやっていける自信があるんです。なぜか不安にならない。今はたくさん大変なことがあるけど、〝気が付いたらここに来ていたね〟って、いつかふたりで笑っている姿が想像できるんです。結婚したての頃、彼とまだ一緒に何も作っていなかった頃から、その確信はありました。ふたりで映画を作っていると、舞い上がったり気落ちしたり、気持ちのアップダウンは激しいけれど、でもそれを繰り返しながら〝あれ? ここまで来た〟〝あ! ここまで来た〟って、コツコツと少しずつ上がってきている。未来が見えるんです。そこは私、自信があります!」

 妻にここまで信頼されたら、夫は頑張るよね。その言葉を聞いて富名監督は、

「本当に、ひとりだったら多分、できないと思います。奧さんがいなかったら、支えがなかったら、映画作りなんてわざわざこんな大変なこと、出来なかったかも知れません(笑)」

  • 富名哲也(とみな てつや)

    北海道釧路生まれ。イギリスに留学。London Film Schoolで映画製作を学ぶ。2013年に製作した短編映画『終点、お化け煙突まえ。』が釜山国際映画祭のコンペ部門に選出されたのを始め、インドネシアの映画祭、セルビアの映画祭などで受賞。現在までスペイン、スイス、コロンビア、米国、中国ほか、世界10カ国以上の国際映画祭に正式招待され、2015年2月ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映された。またイタリアのヴェネツィアで開催された現代美術展『未完風景展』でも約5ヶ月にわたり、展示上映された。そして2015年、オリジナル長編脚本「SMOKE ON THE WATER」が、釜山国際映画祭アジア・シネマ・ファンドの脚本開発部門にて日本から初選出されている。

    オフィシャルサイト  http://tetsuyatominafilm.com/

    畠中美奈(はたなか みな)

    鹿児島県生まれ。大学卒業後、(株)久米設計の設計室に勤務。プロレスラー高田延彦率いるUWFインターナショナル広報・企画部長を務めた後、1998年長野パラリンピック冬季競技大会閉会式制作チーフ、『管野秀夫Dearest Musicians』の企画制作、『 hide(元 XJAPAN)写真集』制作、松田優作13回忌の全プロジェクト、松田龍平のマネジメントなどを経て、結婚後は富名哲也氏の監督作品を企画・プロデュースしている。

    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/