映画祭といえば、レッドカーペットと舞台挨拶。タキシードを着たイケメン俳優とドレスで着飾った女優たちが華やかに盛り上げるものだと思われがちだけど、釜山国際映画祭には別の側面がある。映画作りを応援する、さまざまな活動が行われているのだ。

 その代表格のひとつに、有望な作品への資金援助をしてくれるアジア映画ファンド(ACF)がある。今年はアジア各国から182作の応募が集まる中、脚本開発部門で選ばれた5作品の中に、この人、富名哲也さんの作品『SMOKE ON THE WATER(スモーク・オン・ザ・ウォーター)』があった。なんと日本人初の快挙だという。

「釜山国際映画祭でファンドを勝ち取るのはなかなか難しいと言われていて、正直、ダメモトで出してみたら、選んでいただけたんです。どうして選ばれたのか、自分でもわからないんですけど、運が良かったのかな。勝手にご縁を感じています(笑)」

〝縁〟は2年前、彼の作った短編映画『終点、お化け煙突まえ。』が第18回釜山国際映画祭のコンペ部門に選出されたときに始まった。YEOはその時点で富名さんを取材している。先見の明があるよね、YEO(自画自賛)。

 せっかくだから今回も密着取材、させていただきます!

  • 富名哲也(とみな てつや)

    北海道釧路生まれ。イギリスに留学。London Film Schoolで映画製作を学ぶ。2013年に製作した短編映画『終点、お化け煙突まえ。』が釜山国際映画祭のコンペ部門に選出されたのを始め、インドネシアの映画祭、セルビアの映画祭などで受賞。現在までスペイン、スイス、コロンビア、米国、中国ほか、世界10カ国以上の国際映画祭に正式招待され、2015年2月ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映された。またイタリアのヴェネツィアで開催された現代美術展『未完風景展』でも約5ヶ月にわたり、展示上映された。そして2015年、オリジナル長編脚本「SMOKE ON THE WATER」が、釜山国際映画祭アジア・シネマ・ファンドの脚本開発部門にて日本から初選出されている。

    オフィシャルサイト  http://tetsuyatominafilm.com/

    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/