#2 素晴らしいけど、不合格?
ソプラノ歌手は〝歌女優〟 田村麻子
- Magazine ID: 2614
- Posted: 2015.09.29
田村さんは日本の音楽大学で声楽を学んだ後、ニューヨークに留学。世界3大テノールのひとり、ドミンゴ氏の薦めだった。
「ドミンゴさんが日本で開催した国際オペラコンクールに、私が史上最年少で入賞したんです。そのとき私を気に入って下さって〝君はダイヤモンドの原石だ。アジア人だからすごく苦労すると思うけど、留学するならアメリカが良いよ〟って」
ニューヨークの音楽院を見事、首席で卒業。直後から、ドミンゴ氏の言っていた〝苦労〟を実感することになる。
「オペラのオーディションでは、歌がうまいだけではダメなんです。私はソプラノなので、ソプラノってほとんどお姫さまとか主役が多いんですけど、若くて美しいヒロイン役に、東洋人がキャスティングされる可能性はほとんどゼロに近い。チケットの売れ行きに響きますから、劇場の支配人やプロデューサーが納得しないんです」
あるオーディションで、田村さんが歌いだしたときのこと。関心なさそうだったスタッフは声を聴いた途端、身を乗り出した。歌い終わると全員が立ち上がって〝ブラボー!〟と大拍手。ところがその後、
「〝アサコ、君が一番素晴らしかった。でも今回、東洋人枠はないんだ。ごめんね〟って。会場を出て、号泣しながら歩いて家まで帰りました。あまりのショックで、〝どうして私、日本人に生まれたんだろう?〟って」
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出演:田村麻子(たむら あさこ)
京都府出身。国立音楽大学声楽科、東京藝術大学大学院修士課程修了。ニューヨーク・マネス音楽院首席卒業。1997年ドミンゴ国際オペラ・コンクールに最年少で入賞したのを始め、世界の主要コンクールで上位入賞を果たす。世界各地でオペラに出演。日本国内でも8月末からリサイタルツアーを行っている。
オフィシャルサイト http://www.asakotamura.com/japanese.html
コンサート情報
11月3日ワシントン スミソニアン博物館/12月23日 第九演奏会 東京文化会館(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)
CD情報
『Jewels Of Ave Maria』古今さまざまな16名の作曲家によるアヴェ・マリア集。
『ノスタルジア-日本の歌-』抒情歌から唱歌、童謡、村井邦彦作品まで。
上記2枚はナクソス・ジャパンよりリリース。ともにANA国際線オーディオプログラム「ANA SKY CHANNEL」に2ヶ月間搭載されている。取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://www.haginiwa.com/