まるでピアノが歌っているみたい! 笑ったり叫んだり、囁いていたり。西川悟平さんの奏でるピアノの音には、体温がこもっている。何かを語りかけてくる。

「僕ね、演奏する前、ピアノにキスしたりします(笑)。手で触れて〝よろしく!〟って挨拶するし、終わったあとも〝ありがとう〟って。そんなことしても、ピアノが温かくなったりはしないけど、そういう精神的コネクションを大切にしているんですよー」

 めっちゃ明るい、でもちょっとシャイな、関西弁のお兄さんだ。
 彼がこの春、上梓した本のタイトルは『7本指のピアニスト』(朝日新聞出版)。10本あるじゃん! と思ったけど、それは〝ピアノを前にして動く〟指が7本という意味。
 ニューヨークを根城に欧米でデビューしたものの、ジストニアという難病ですべての指が動かなくなり「2度とピアノは弾けないだろう」と診断された。その彼が、どのようにしてピアニストとして復活したのか。いやいやそれ以前に、15歳までピアノなんて弾いたことの無かった彼が、どうして欧米の大観衆の前で演奏するほどのピアニストになったのか。今週のYEOは、ドラマチックであります。

  • 出演:西川悟平(にしかわごへい)

    1974年、大阪府堺市生まれ。JHCFoundation,Incグリニッチ国際音楽院ディレクター。米日財団会員。15歳からピアノを始め、3年後にニューフィルハーモニー管弦楽団とピアノコンチェルトを共演。99年、巨匠、故ディヴィッド・ブラッドショー氏とコズモ・ブオーノ氏に認められ、ニューヨークに招待される。同年、リンカーンセンター・アリスタリーホールにてニューヨークデビュー。翌年より定期的にカーネギーホールにて演奏。01年、両手の演奏機能を完全に失い、ジストニアと診断された。リハビリにより右手の機能と左手の指2本を回復させ、現在に至る。著書に『7本指のピアニスト』(朝日新聞出版)。

    オフィシャルブログ http://goheinishikawa.blogspot.jp/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『BAILA』『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/