『ストロボ ライト』は、記憶を失った刑事をめぐる4つの犯罪が複雑に絡むサスペンス映画といえますが、じつは主人公とヒロインのラブストーリーとして片元亮監督は作っているそうです。

 曰く、“クリミナル・ラブストーリー”。え? さっぱりわからない? それもそうですね。ここで少し、映画のストーリーをご紹介しましょう。

 主人公は、福地教光さん演じる小林刑事。物語は閑静な住宅地で起きた猟奇的な殺人事件から始まります。やがて、被害者の過去に関わると思われる殺人教唆事件、手口が酷似した23年前の殺人事件、そして事件の容疑者……次々と謎が提示されます。

 また、小林には同棲を始めたばかりの美咲という恋人がいます。深く、静かに、愛し合っている二人。しかし、小林が捜査中に負傷し記憶障害に陥ったことから、二人の暮らしに変化が訪れます。殺人事件の犯人は誰なのか? そして、小林と美咲の行く末は……?

 小林刑事の同僚、坂城君さん演じる吉行刑事は若手のキャリア組。今回このインタビューで宣伝担当として取材に応じてくださった槇徹(まきとおる)さんも刑事役で出演しています。

 2時間の上映を見終えたとき、サスペンスものにありがちな“謎解き”のカタルシスよりも数々の疑問が残ります。しかし、決してストーリーに齟齬があるわけではなく、観た人に想像の余地があるということ。それは、監督の映画づくりの姿勢を示しています。

「映画の中で、すべてを語る必要はないと思っています。映画に描かれていない部分は、観る人が自由に感じてくれればいいのです」

『ストロボ ライト』は、5月8日(金)まで新宿ケイズシネマ、以降、横浜シネマリン(神奈川)、シネマテークたかさき(群馬)などで順次公開予定です。

映画『ストロボ ライト』
閑静な住宅街で起こった殺人事件。
それは遺体から手首を切り落とすという猟奇的なものだった。捜査一課の刑事・小林秀は過去に関わった或る事件との共通点に気づく。今回の事件と同じ時系列の展開を見せはじめる過去の事件。混迷を極めていく捜査の中、襲われ重傷を負う小林。この出来事をきっかけに、小林の記憶は断片的に欠落し始める。失われていく記憶の先に見た事件の真実とは――

本作の制作は、2010年伊丹市の後援を受け開始した。東京を舞台にした物語でありながら伊丹市を中心に関西での撮影を敢行。スケールの大きな映画作りだけでなく、先行劇場公開までも関西という地域にこだわって実現させた。その反響はインディペンデント映画としては異例の東京でのロングラン完全ロードショーへと繋がり2015年全国へと拡がり始めている。国内では第29回高崎映画祭にて邦画が初めてクロージング作品に選ばれる快挙を達成。海外ではカナダ国際映画祭2015 Rising Star Award 新人監督コンペティションにおいて新人監督賞を受賞。今まさに関西で起きた波は地方や大都市、そして世界へと飛び火せんとしているのだ。

  • 出演:片元亮(かたもとりょう)

    1977年山口県出身。大阪芸術大学大学院修士課程修了。在学中から幾つかの作品を制作し、2006年に短編映画『キラキラ』で第10回IMF短編部門でグランプリを受賞。現在公開中の映画『ストロボライト』が第29回高崎映画祭クロージング作品に選出。カナダ国際映画祭2015Rising Star Award 新人監督コンペティションにおいて新人監督賞を受賞。

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    映画『ストロボ ライト』公式ホームページ

    http://www.strobelight-movie.com

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    新宿ケイズシネマ http://www.ks-cinema.com

    横浜シネマリンにて5月23日㈯19時00分より二週間上映。
    また、シネマテーク高崎でも上映(時期未定)。その他劇場とも現在交渉中

  • 取材/文:加藤いづみ

    コピーライター、ディレクター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画、ディレクションのほか、企業のPR誌制作を手がけている。
    https://www.facebook.com/mi.company

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/