留学から戻ると、待っていたのは就職活動。

「でも、自分がやりたいことがわからない。インターンシップもないのに仕事なんて決められない。・・・・って、今振り返ると、ただの〝アメリカかぶれ〟ですよね(笑)。行き先が見えなくて落ち込んでいたときに劇団四季の『ライオンキング』を見て、〝これだ!〟と」

 グーグルに〈シアター・NY・インターン〉と打ち込み、受け入れてくれる劇団を探して、国際電話で直談判。バイトでお金を貯め、今度はNYへ向かったのだが・・・・。

「そこで本当の挫折です。小さな劇団で美術製作のインターンを始めたものの、収入にはならないんですよ。しかもようやく見つけたアパートの大家が日本人大嫌いで、理由もないのに〝明日出てって!〟と。そこからホームレスになりました」

 スーパーマーケットのゴミを漁って食糧を調達したり、レズビアンのカップルに拾われて〝レズの館〟に泊めてもらったり、中学校のアート講師になったりと、そこからは〝NY迷走時代〟。そんな中から彼女は、最初の結婚をする。

「当時私は、ホームレスなのにすごく太っていたんです。食えるときに食っておかないといつ食えるかわからないし、しかも私はベジタリアンなので、ゴミの中からベーグル、ポテチ、ポテトと目に入った炭水化物を全部食べていた。〝エルトン・ジョンの劣化版〟と言われていました。でもそんなとき、超イケメンのロック・ミュージシャンと知り合ったんです。あまりにもカッコ良くてひと目惚れしちゃって、そこから頑張りました。劣化版のエルトン・ジョンがイケメン相手に、押して引いての恋の駆け引きです。はい、勝ちました。結婚してふたりで、彼の故郷であるウィスコンシン州のマディソンで暮らし始めました」

  • 出演:ミサコ・ロックス

    法政大学在学中に奨学金派遣留学で渡米。卒業後、人形師を目指しNYに渡ったが、挫折。ホームレス、中学の美術講師など迷走期間を経て、全米でマンガ家デビューを果たした。NYタイムス、NHKドキュメンタリー、BBCドキュメンタリーなどで紹介されたことも。日本ではコミックエッセイ『もうガイジンにしました』自己啓発書『理由とか目的とか何だっていいじゃん! チャレンジしなくちゃ後悔もできない』(ディスカバー21)を出版。

    オフィシャル・ブログ
    http://www.misakorocks.com

    HAIR&MAKEUP : 小椋ケンイチ

    オフィシャル・ブログ
    http://ameblo.jp/ogune/

    STYLIST : 淵上優樹

    衣装/すべてスタイリスト私物

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『BAILA』『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/