『スーホの白い馬』というこのお話、日本ではなんと48年も前から絵本になったり小学校の教科書に載ったり音楽劇になったりしているので、〝なんとなーく憶えてる〟という人も多いはず。モンゴルの遊牧民の少年と白馬の物語は優しくて哀しくて、切なくて。そしてこの物語の最後に出てくるのがこの楽器、馬頭琴なのだ。

「『スーホの白い馬』というお話は、モンゴルでは小さい子どもがおじいちゃんやおばあちゃんの膝の上で聞かされる、昔話のようなものなんです。ですから僕が日本に来て、小学校で馬頭琴を演奏するようになってから、それを聴いた子ども達が〝スーホの白い馬の楽器だ!〟って言うのを聞いて、ビックリしました。〝なんで君たちその話を知ってるの?〟って尋ねたら、教科書を持ってきて見せてくれた。それを見て懐かしくて嬉しくて、すごく感動しました」

 馬頭琴のライブ演奏を聴いた子どもたちは、大喜び。あちこちの小学校からも依頼が殺到し、それに応えるうちに、セーンジャーさんはあることを思いついた。

「モンゴルの風景とか映像をバックに演奏したら、もっと喜んでもらえるんじゃないかと思ったんです。そこで05年にモンゴルに里帰りしたとき、友だちに協力してもらって、たった1週間で『スーホの白い馬』というDVDを作りました。なりゆきで、スーホを演じたのは僕です(笑)。出来が良かったので日本の文部科学省のコンペに出したら、運良く選定作品に選ばれて、学校で教材として使われることになりました」

『駿馬の如く』

2015年3月6日発売
発売元 : ACOGARE,Inc.
仕様 / 品番 / 価格
ACG-001 / ¥1,852+消費税
http://www.senjiya.net

  • 出演:セーンジャー 賽音吉雅

    内モンゴル出身。内モンゴル芸術学院卒業後来日。大東文化大学大学院修了。2005年『スーホと白い馬』映画出演、音楽監督を自ら行い、文部科学省選定作品に選定される。2007年映画『蒼き狼 地果て海尽きるまで』において馬頭琴を担当、モンゴルロケに参加。2008年北京オリンピック、ギネス世界記録イベントにおいて馬頭琴を演奏。2012年NHK『エル・ムンド』『ほっとアジア』に出演。2013年内モンゴル国際文化交流宣伝大使に任命

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/