リーダーのtowadaは〝ジルデコのエンジン〟だと、kubotaは言う。

「第一印象は〝あ、出た、東京の人!〟って。つんつんしてて怖いって思ったんです。でも2人で飲んだり話すようになったら真逆で、びっくりするくらい暑苦しい男だった(笑)。人懐こくて熱くて、演奏でもふだんの生活でも自分のエネルギーを出し惜しみしない。12年経つ今でも、本当に面白いなこの人って」

 chihiRoも同意見だ。

「わたしのこと、よく叱ってくれる、ありがたい人です。怖い存在だけど、自分の中のエネルギーを振り絞って叱ってくれているのがわかるんです。絶対に人を裏切らないし、どんなにメンドクサイ相手でも、放っておかない」

 髪を一束にまとめ、その表情はどこか醒めているように見えるけど、なるほど、ジルデコのサウンドがクールなのにどこか温かいのは、towadaが発する熱量のせいだったのか。緻密なリズムを刻みながら、他の楽器やヴォーカルを支える彼のドラムには、全体を包み込むような大きさと力がある。

 6歳からクラシックピアノの教育を受け、小学校の吹奏部でトランペットと出会い、お年玉で買ったマイルス・デイビスのCDを入り口にジャズにのめり込んだ。ドラム経験は高校時代、ヘビメタ・バンドを組んだ時からだという。シカゴ音楽大学に籍をおき、毎日のようにさまざまなジャンルのライブを見て、音楽漬けの日々を過ごした。帰国後、いくつかのジャズコンボやバンドを結成した後、kubotaとchihiRoを引き合わせ、3人でジルデコを結成した。

 目指すのは、ラフマニノフ。え! ラフマニノフ?

「小学校の頃、家にあるレコードを片っ端から聴いていたとき、ラフマニノフの『ピアノ協奏曲2番』に針を落したら、もう居ても立っても居られない、体の中がカーッと熱くなるような、ぐっとくるものがあったんです。それがその後、僕の音楽の基準になっている。理由もなく人を感動させる力が音楽にはあるのだから、そこまでのものをいつか、作らなければいけない。その理由は未だにわからないけど、ジャズを聴いたり演奏しているときたまに〝あ、これだ!〟と思う瞬間があるんです。その瞬間をもっとひろげて、形にしていくのが、今後の僕のするべきことですね」

『ジルデコ6〜Just a Hunch』

2014年10月22日発売
発売元 : VICTOR ENTERTAINMENT
仕様 / 品番 / 価格
<初回生産限定盤CD+ライブDVD > VIZL-732 / ¥3,400+消費税
<通常盤CD > VICL-64237 / ¥2,900+消費税
http://www.jilldecoy.com/disco/3476

  • 出演:JiLL-Decoy association ジルデコイ・アソシエーション 通称ジルデコ

    2002年に結成された、ヴォーカルchihiRo、ギターkubota、ドラムtowadaの3人で構成されるユニット。ジャズ/ポップス/ロックをベースに、クオリティの高いオリジナルな世界を構築している。高い演奏力を誇り、ライブやジャズフェスには多くのファンが集結。5枚目のアルバム『ジルデコ5』は第55回日本レコード大賞の優秀アルバム賞を受賞した。

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/