イ・ウヌさんは24歳のとき、ビールのCMに出演。キャリアをスタートさせた。

「事務所には所属せず、自分ひとりで売り込んで行って、モデルとして活動していました。韓国では珍しい話ではないんですよ(笑)」

 翌年、今度は女優を目指してドラマの公開オーディションに参加。700倍という難関をくぐり抜け、役をゲットしたものの、大人の事情でその話は流れ、別の女優がその役を演じたとか。そんな悔しい思いを重ねながら、ひとつひとつの役をつかみ、自分のキャリアを作り上げてきた。

「『メビウス』も『さよなら歌舞伎町』もそうやって、オーディションで役をもらいました。実は『メビウス』のときは、あまりに過激な内容なので、事務所に反対されたんです。ですから事務所を辞めた上で、ひとりでオーディションを受けました」

 もちろんオーディションには、受かるときもあれば、落ちることもある。

「ダメだったときには落ち込みますよ、もちろん。今までに何度も落ちています。でもオーディションに臨むときには、どんな結果であっても後悔しないよう、心の準備はしていきます。後から、受けなきゃ良かった、なんて思わないようにね(笑)」

 話しているうちに、彼女に過激な役のオファーが続く秘密が、わかったような気がした。この透明感と、清潔感。どんなにドロドロの、人間の性を丸出しにするような役柄でも、彼女が演じることで、観客は正視することができるのではないか。どんなに汚しても汚しきれない何かを持っているからこそ、彼女には汚れ役がよく似合うのだ。

 そんなイ・ウヌさんに聞いてみた。女優に一番必要な要素は、なんですか?

「難しい質問ですね! 演技? 美貌? なんだろう(笑)。でも私は、自分がどうやればいいか、自分自身がわかっていると思います。それは私の財産ですね。自分をわかっている、それが私の武器であり、才能です。誰とも似ていない女優になりたい。他の人ができない役柄こそ、私が演じたい。それに向って、自分との戦いだと思っています」

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/