今回の釜山国際映画祭に、ク・ヘソンさんは映画監督として登場。「韓国映画の今日―パノラマ」部門に『Daughter』という作品を出品している。
 ク・ヘソンさんといえば、韓国版『花より男子』でヒロインのクムを演じた女優さん。韓国では〝オルチャン(最高の顔)出身〟と呼ばれ、インターネットでその美貌に注目が集り、華やかにデビューした。美人は得だよねー、と思ってしまいがちだけど、実は彼女には、10年にわたる無名時代があったとか。ちゃんと苦労もしてたのね。
『花男』以降も女優として活躍する一方、国民的歌謡番組のMCに抜擢されたり、出演ドラマのテーマ曲を歌ったり、絵を描いたりと多方面に活躍。その上映画製作にも乗りだし、本作は『妖術』(2010)『桃の木』(2012)に続く3作目の監督作品だという。

「私がなぜ監督になれたのか、自分でもわかりません。子どもの頃から絵を描くのが好きで、描きながらよく考えていたんです。この絵が動いたらどうなるだろう?って。映画作りはその延長線上にあるのかもしれませんね」

 女優さんっぽいお返事だ。おっとりと微笑んで彼女がそう言うと、それ以上つっこんだことを聞くのは野暮だ、と質問の切っ先が鈍ってしまった。ま、韓国語ができないという力不足もあるけれど。
 女優であると同時に映画監督というスタンスは韓国でも注目されていて、女性誌にはロング・インタビューが。そこではこんなことを言っていた。
〝私の部屋は狭くて、3坪くらい。持ち物は全部そこに置いておけるくらい、少ないです。靴も3足しかありません。服だって、ほんの少し。20代の頃はたくさん物を持っていたけど、本当に必要な物って少しだけですよね・・・・〟って、本当?

「あー、あの記事はちょっと大げさなんです(笑)。家は大きいけど、自分の部屋は小さいので。でも、物を買う欲求が減ったというのは、本当です。将来は小さな家で、もっとシンプルに生きようと思っているくらい・・・・」

 そんな彼女が、映画監督として作りたい作品は、いったいどんな作品なんだろう?

「もともとジブリ作品が大好きで、日本のジブリスタジオに見学に行ったこともあるくらい。観客としては、想像力がひろがる作品が好きです。ロマンティック・コメディも大好きですしね。最初に作った映画、次に作ったのも、ファンタジー映画でした。でも今回はどうしても、リアルな作品にしたかったんです・・・・」

 脚本、出演、監督をこなしたという『Daughter』、いったいどんな作品なのだろう?(続く)

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/