『TOKYO TRIBE』は「世界初のバトル・ラップ・ミュージカル」というキャッチ・コピーがついている。原作は井上三太の大ヒット漫画。『ブレードランナー』のような混沌として近未来的なオープン・セット。爆音のビートに乗ってセリフがラップで歌われる。ヒップ・ホップ・スタイルのギャング同士がバトルしまくる。『ウエスト・サイド物語』のようなストーリーでもある。説教くさいところが全くないところもいい。ただただエンターテインメントに徹した作品。彼女はノー・スタントですべてのアクションを自分で演じている。特に彼女の後ろ回し蹴りは凄い、これだけでもお金を払う価値がある映画だ。

「初めての大役だったので、自分を追い込むのが大変でした。肌の露出も多いから体も絞った方がいいと思って撮影前にジムに通いました。マンツーマンでインストラクターについてもらって、食事制限もかなりきつかったです。アクションの稽古も同時にあって、もうお腹空きすぎてフラフラだったんですよ。それがいざ撮影現場に行って監督に会ったら『お前、やせてんじゃねーよ。今日から毎日焼肉とコーラな』って言われて(笑)。その日から焼肉食べにいきました(笑)。せっかくの努力が意味なかったんです(笑)」

 彼女が売れる理由その8、基本真面目で努力家。でもちょっとだけ天然。これがわざとらしくなく自然体に見える。そこが可愛い。
 彼女が売れる理由その9、多くの顔を持っている。同一人物? と思うくらいそのつど別の印象をうける。

「今日はストリートっていう撮影のテーマだったのでボーイッシュなスタイルにしました。普段でもボーイッシュなスタイルは多ですね。性格はサバサバしてるよねとはよく言われます」

 実は彼女、語尾を「~っすね」とかまるで男子のように喋るところがあった。だぼだぼのTシャツというストリート・スタイルの彼女はまるで男の子のように見えた。ところが。

「ハリー・ポッターとジャスティン・ビーバーが大好きなんですう」

 と目をキラキラさえながら話す姿はまだあどけない女の子そのもの。ところが映画の中で見せる強い女の姿、セクシーな女の姿。とても同一人物とは思えない。変幻自在の演技上手いというだけでなく、今現在外見も変化し続け、内面も成長ている証拠だろう。それが証拠に彼女をネットで検索してほしい。別人に見える写真ばかりだ。ここに写っている彼女も実はすでにいないのかもしれない。それぐらいのスピードで変化しているのではないか?

「今、一刻も早くマスターしたいのが英語です。『バイオハザード』のミラ・ジョヴォヴィッチを観たのがきっかけで、アクションを始めました。だから自分の中での最終目標はハリウッドに行ってアクション映画に出る事です」

 彼女が売れる理由その10、明確な目標を持っている。その目標に向けて努力している。
 そんなに遠くない将来、彼女がジェイソン・ステイサムとかマット・デイモンあたりを相手に後ろ回し蹴りを決めているシーンを観ることができるかもしれない。

  • 出演:清野菜名

    1994年10月14日生まれ、愛知県出身。映画『TOKYO TRIBE』スンミ役に抜擢され一躍注目される。今後の公開予定は、映画『少女は世界で戦った』(監督:金子修介)マリ役。映画『進撃の巨人』(監督:樋口真嗣)。テレビ『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)など。

    オフィシャル・ブログ http://ameblo.jp/seeeno7/

  • 取材/文:横田一郎

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/