今年彼女は、園子温監督最新作、『TOKYO TRIBE』に出演した。

「最初にオーディションに行った時、まず監督に『おはようございます』って挨拶したら『お前、おはようございますじゃねーんだよ、今何時だと思ってんだ!』って言われて台本も読ませてくれず、挨拶だけで帰らされました。その時『終わったな』って思いました。そしたらアクション要員としてもう一度オーディションを受けさせてもらえることになって、アクションは得意分野だし、自信をもってできたんです。そうしたら監督が『輝いて見えたからスンミ(ヒロイン役)にする』って言ってくださって」

 彼女が売れる理由その5。園子温監督映画でヒロイン役に抜擢されたから。
 園子温監督は有名無名にかかわらず、その瞬間輝いている人間をキャスティングする。そのずば抜けた審美眼は周知の事実だ。『紀子の食卓』は吉高由里子。『愛のむきだし』の満島ひかり、安藤サクラ。『ヒミズ』では二階堂ふみ。園子温監督作品に出演後ブレイクした女優は多い。これにはちゃんと理由がある。
 プロのミュージシャンから愛されるミュージシャンのことを「ミュージシャンズ・ミュージシャン」と呼ぶ。園子温監督は日本では数少ない「ディレクターズ・ディレクター」なのではないだろうか。映像のプロフェッショナルたちからもリスペクトされている監督だと思う。
 映画やテレビ・ドラマ、コマーシャルなどの現場では、しがらみと大人の事情だらけである。つまり例えるなら演出もキャスティングも、手足を縛られ猿ぐつわをされた状態で演出する。そんなこともさぞ多いだろう。
 しかし園子温監督は、そうしたしがらみや大人の事情を全部蹴散らして好き放題演出しているように思われているのではないだろうか。あくまで私の想像ですが…。
 園子温作品を観た映像のプロたちが、その出演女優の素晴らしさに気づいて出演をオファーする。だから彼女も今頃出演オファーが殺到している、のではないだろうか。これも私の想像ですが…。

  • 出演:清野菜名

    1994年10月14日生まれ、愛知県出身。映画『TOKYO TRIBE』スンミ役に抜擢され一躍注目される。今後の公開予定は、映画『少女は世界で戦った』(監督:金子修介)マリ役。映画『進撃の巨人』(監督:樋口真嗣)。テレビ『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)など。

    オフィシャル・ブログ http://ameblo.jp/seeeno7/

  • 取材/文:横田一郎

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/