『花ト囮』は、海外でも大きな評価を得ている。2009年に日本で賞をとってから、海外の演劇祭にも呼ばれていった。

「韓国、ルーマニア、イランなどへ行きました。特に世界三大演劇祭のひとつ、ルーマニアのシビウ演劇祭に呼んでもらえたのは意外でした。ダンスをしていなかったら会えないような人たちにも出会えましたし、ダンスを続けてきて良かったなって。」

 イランのファジル演劇祭では「表現の査察」という経験もした。

「リハーサルを見せてくれと言われて『腰を動かす振付がひわいだから変えてくれ』と言われたときは驚きました。が、もっと驚いたのは、みんなで同調性を表現するシーンで『みんなで揃って踊るのはアメリカのマイケル・ジャクソンを彷彿させるから止めてくれ』と。納得はできませんでしたが、受け入れないわけにもいかないですから、夜中に振りを直して…。ただ、国の政策としてそういう抑圧はあるのだと思いますが、国民は意外とどんなシーンも喜んでくれて。みんなコカ・コーラを飲んでるし(笑)。そういう矛盾をはらんでいるのかなとは感じました」

 ルーマニアは独裁政権が崩壊した後、自由に演劇ができるようになってシビウ演劇祭が生まれたらしい。

「日本で自由に表現できるのは、恵まれていて素晴らしいことだと思います。でも自由だからいいものが出てくるとも限らないのも事実。イランでもルーマニアでも、制限が人を成長させることもあるんだなと思いました」

 ダンスは彼らを世界へ導く。そこでの経験は、また彼らの表現に大きな魅力を加えていっているのだろう。

  • 長谷川達也

    1977年千葉県生まれ。ダンス・カンパニー「DAZZLE」主宰、ダンサー、演出・振付家。SMAP、V6、TRF、Mr.Childrenらのアーティストのサポート・ダンサー、PV出演などを務め、その後、舞台作品の振付、出演など幅広く活動。ストリート・ダンス、コンテンポラリー・ダンスで受賞多数。演出を含め主演した舞台作品『花ト囮』2009年初演で演劇祭グリーンフェスタ グランプリ。その後、ルーマニアのシビウ国際演劇祭への招聘など、海外からも注目が集まっている。
    『花ト囮』は、いよいよ9月6、7日の2日間、東京国際フォーラム・ホールCで公演される。
    DAZZLE公式ホームページ http://www.dazzle-net.jp/

  • 森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本も多数。
    自著には女性の生き方をテーマにしたものを中心に『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)など多数。映画『ハンティングパーティー』のノベライズ、映画『音楽人』の原作WEB小説などノンフィクション、フィクションを問わず執筆する。
    公式ホームページ http://moriaya.jimdo.com/

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/