[3]怖い夢〜『花ト囮』の物語観
長谷川達也
- Magazine ID: 1623
- Posted: 2014.09.03
国内での評価が一気に高まったのは、2009年に初演した舞台作品『花ト囮』が、演劇の賞をとった事が大きかった。
ダンスを中心に置きながらも、和の芸術的要素を融合させたというこの作品には、ストーリーも綿密に描かれている。
そして「狐の嫁入り」という言い伝えが表現されたシーンは、あまりにも幻想的で怖い美しさに満ちている。
「言い伝えは子どもの頃から知っていましたが、黒澤明監督の映画『夢』を観て、ああ、これをダンスでやったら面白い、絶対やろうと思ったんです」
怖い夢みたいな感じ。それをダンスにする。
「日本の昔話とか民話とか、怖いものも好きですよ。いろんなジャンルの表現があると思いますが、例えば負の感情であっても、それを人は否定できないですよね。豊かな心とは、決して偏ったものではないと思っていて、より複雑な人間の心情を想起させるような作品を作りたいと思っています。」
ダンスは中心ではあるが、表現の道具でもあると長谷川は言う。
「僕が好きな映画、ゲーム、音楽。そこには共通した物語がある。ダンスがわからなくても物語を楽しむことができるし、そんな中でダンスによる視覚的効果に気づいてもらえたら嬉しいですね。」
その物語にはゲーム的な要素も潜む。
「ロールプレイング・ゲーム世代ですね。子どもの頃から物語のあるゲームに夢中になった。人生を選択しながら進んでいく感じとか、ステージ上に展開される絵や文字表現など、影響を受けているところがいろいろあると思います。サウンド・ノベルみたいに音が出てきて文字を読むというようなことも、舞台でできるなと思いました」
メンバーの飯塚は広告業界で活躍するコピー・ライターでもあり、彼との連携で、DAZZLE作品の物語はさらに膨らんでいくようだ。
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長谷川達也
1977年千葉県生まれ。ダンス・カンパニー「DAZZLE」主宰、ダンサー、演出・振付家。SMAP、V6、TRF、Mr.Childrenらのアーティストのサポート・ダンサー、PV出演などを務め、その後、舞台作品の振付、出演など幅広く活動。ストリート・ダンス、コンテンポラリー・ダンスで受賞多数。演出を含め主演した舞台作品『花ト囮』2009年初演で演劇祭グリーンフェスタ グランプリ。その後、ルーマニアのシビウ国際演劇祭への招聘など、海外からも注目が集まっている。
『花ト囮』は、いよいよ9月6、7日の2日間、東京国際フォーラム・ホールCで公演される。
DAZZLE公式ホームページ http://www.dazzle-net.jp/ -
森 綾
1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本も多数。
自著には女性の生き方をテーマにしたものを中心に『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)など多数。映画『ハンティングパーティー』のノベライズ、映画『音楽人』の原作WEB小説などノンフィクション、フィクションを問わず執筆する。
公式ホームページ http://moriaya.jimdo.com/ -
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://www.haginiwa.com/