今回、昼間の撮影だったので、唯一目の前でパフォーマンスを見ることができなかったのが、DJ IKUである。

 なんでも世界DJバトルで、日本人で初めて2連覇を達成したという人なのだ。

 DJといっても、クリス・ペプラーのようにラジオでしゃべる人ではない。いわゆるクラブ(N局長のためだけに注:おねえちゃんが横に座るところではなく、暗くてみんなが踊っているところです)で、レコードを回して音をつないでいく人である。

 レコードプレーヤーの上で、スクラッチといって、手でお皿(レコード)を回しながら音楽をつくっていく。私は以前から疑問に思っていたことがあり、それをぶつけてみた。

「あのスクラッチというのは、レコードの溝の、この部分をこうこすればこういう音が出る、というのを数ミリ数回転違わずにやっているものなんですか」

 すると、IKUは静かに教えてくれた。

「そうですね。世界大会のレベルになると、そうなりますね。本番で、練習通りの音を出せないとダメです」

 すごいなあ、と感服した。

 このTOKYOcreatistのチームでは、誰とでも組むことができる。というか、IKUのつくる音がショーには欠かせない。

「アクションに合わせて音でもアクションする。音を担う責任感は大きいです。ショーマンとして存在できる事も嬉しいですね」

 小柄で、街を歩いていたらそのすごさがわからないからこそ、音を操りだしたときの彼はきっとかっこいいんだろうな、とふと思った。

  • 出演:DJ IKU

    1984年埼玉県生まれ。世界中で開催されているスクラッチDJの大会「Red Bull スリースタイルDJバトル」で日本人初の2連覇を果たす。2010年のスリースタイル世界大会にはアジア圏から唯一の日本人として出場した。2012年には、国内最大規模のビーチーパーティー、BIG BEACH FESTIVAL’12にも出演、世界各地、日本全国を駆け巡っている。
    TOKYOcreatist http://www.TOKYOcreatist.com
    facebook https://www.facebook.com/dj.iku
    twitter @DJ_IKU

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

SPECIAL THANKS:
INTERBREED http://www.interbreed.biz

撮影:萩庭桂太