腕利きの音楽家の中で光る存在感
澤田かおり
- Magazine ID: 1579
- Posted: 2014.06.16
「華がある」というのは、こういう人をいうのだろう。
今、日本中のオヤジを魅了している井上陽水の「氷の世界」ツアーでコーラスに目が釘付けになった。
1973年、日本初のミリオンセラーとなった、陽水の『氷の世界』を全曲再現するツアーは全国各地で熱狂を持って迎えられている。バンドメンバーは、小島良喜(キーボード)、美久月千晴(ベース)、今堀恒雄(ギター)など腕利きばかり。そんなベテランミュージシャンに囲まれて、堂々の佇まいで歌っていたのが、澤田かおりだった。
現在20代後半。『氷の世界』は彼女にとっては生まれる前の作品。にもかかわらず、70年代前半の空気を違和感なく再現していた。
「コーラス、澤田かおり、ちゃ~ん!」
陽水はメンバー紹介の際、大きな声で“ちゃん”付けで叫んだ。
いったいどんなシンガーなのだろう――。
帰宅して調べると、すでにソロデビューしているシンガーソングライターだった。CDはシングルが1枚。タイトルは「I’m home.」だ。
さっそく手に入れて聴く。声の伸びが素晴らしい。自分のホームタウンや大切な人々を想う普遍性のある歌詞も印象的だ。そのほかには、東芝「LED10年カレンダー」やユニクロ「マイクロフリースセット」など数々のCM曲を手掛けていることも知った。
澤田かおりは、米ボストンの名門音楽大学、バークリー音楽院出身の実力派の音楽家だったのだ。
そして、「氷の世界」ツアーを観た翌週には澤田のソロライヴを聴きに行った。
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澤田かおり
1985年、米ワシントン州シアトルで生まれる。3歳からクラシックピアノ、エレクトーン、作曲をヤマハ音楽院学ぶ。桐朋女子高等学校作曲専攻卒業。2005年に渡米、ハーバード大学サマースクールEnglishプログラムを受講した後、マサチューセッツ州ボストンにある音楽の名門バークリー音楽院入学。09年に帰国。13年に音楽を手掛けた東芝「LED10年カレンダー」のCMが複数の広告賞を獲得する。12年にインディーズレーベルから、アルバム『PRISM』をリリース。13年にMISIAのデビュー15周年ツアーにコーラスで参加。14年は井上陽水の「氷の世界」ツアーにコーラスで参加。最新作は『I’m home.』(ハッツ・アンリミテッド 3曲入り¥1,000+税)。7月3日に東京・渋谷「shibuya gee-ge.」でライヴを行う。
http://kaorisawada.com/ -
取材・文:神舘和典
1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。
新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html
ヘアメイク:西田裕美子 https://www.facebook.com/yumikonishida.deuce
撮影:萩庭桂太