「華がある」というのは、こういう人をいうのだろう。

 今、日本中のオヤジを魅了している井上陽水の「氷の世界」ツアーでコーラスに目が釘付けになった。

 1973年、日本初のミリオンセラーとなった、陽水の『氷の世界』を全曲再現するツアーは全国各地で熱狂を持って迎えられている。バンドメンバーは、小島良喜(キーボード)、美久月千晴(ベース)、今堀恒雄(ギター)など腕利きばかり。そんなベテランミュージシャンに囲まれて、堂々の佇まいで歌っていたのが、澤田かおりだった。

 現在20代後半。『氷の世界』は彼女にとっては生まれる前の作品。にもかかわらず、70年代前半の空気を違和感なく再現していた。

「コーラス、澤田かおり、ちゃ~ん!」

 陽水はメンバー紹介の際、大きな声で“ちゃん”付けで叫んだ。

 いったいどんなシンガーなのだろう――。

 帰宅して調べると、すでにソロデビューしているシンガーソングライターだった。CDはシングルが1枚。タイトルは「I’m home.」だ。

 さっそく手に入れて聴く。声の伸びが素晴らしい。自分のホームタウンや大切な人々を想う普遍性のある歌詞も印象的だ。そのほかには、東芝「LED10年カレンダー」やユニクロ「マイクロフリースセット」など数々のCM曲を手掛けていることも知った。

 澤田かおりは、米ボストンの名門音楽大学、バークリー音楽院出身の実力派の音楽家だったのだ。

 そして、「氷の世界」ツアーを観た翌週には澤田のソロライヴを聴きに行った。

『I’m home.』

発売中(2014年1月18日発売)
CD 1,000円+税 HUCW-10510
https://www.youtube.com/watch?v=rvEhEVWi7oc

  • 澤田かおり

    1985年、米ワシントン州シアトルで生まれる。3歳からクラシックピアノ、エレクトーン、作曲をヤマハ音楽院学ぶ。桐朋女子高等学校作曲専攻卒業。2005年に渡米、ハーバード大学サマースクールEnglishプログラムを受講した後、マサチューセッツ州ボストンにある音楽の名門バークリー音楽院入学。09年に帰国。13年に音楽を手掛けた東芝「LED10年カレンダー」のCMが複数の広告賞を獲得する。12年にインディーズレーベルから、アルバム『PRISM』をリリース。13年にMISIAのデビュー15周年ツアーにコーラスで参加。14年は井上陽水の「氷の世界」ツアーにコーラスで参加。最新作は『I’m home.』(ハッツ・アンリミテッド 3曲入り¥1,000+税)。7月3日に東京・渋谷「shibuya gee-ge.」でライヴを行う。
    http://kaorisawada.com/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

ヘアメイク:西田裕美子 https://www.facebook.com/yumikonishida.deuce
撮影:萩庭桂太