東京渋谷、公園通り近くのライヴハウス「Shibuya gee-ge.」で、澤田かおりのライヴ「Singin’ In My Dining Room vol.1」は行われていた。

 開演30分ほど前に訪れると、200人ほどの客席はすでに満席。男女さまざまな世代のリスナーが集まっている。

 1曲目は「Singin’ In My Dining Room」。このライヴのオープニング曲となるピアノでの弾き語りだ。衣装は黒地に白のストライプ、ノースリーブのワンピース。後ろに流した髪からかたちのいい耳がのぞいている。

 タイトルでもわかるように、ライヴ会場を自分の家に見立てた演出である。澤田は歌い演奏するだけでなく、彼女が自分で仕込んだ豚角煮をこの夜の特別メニューとしてふるまっていた。

 2曲目には、ギターとパーカッションが加わり、「I’m home.」を歌う。リリースしたばかりのシングルナンバーだ。

「この会場では2カ月に1度くらいのペースでライヴを行っています。そして、毎回必ず1曲は新曲を歌うことが自分に課しているミッションです」

 さらにJA共済のCMへの書き下ろしである新曲「つぼみ」、インディーズ時代のアルバムから「気づいて」などを歌っていく。

 そして、カバーを2曲。キャロル・キングの「君の友だち」と井上陽水の「帰れない二人」である。

 キャロル・キングは澤田が最も好きなシンガーソングライターの1人だ。このライヴ「Singin’ In My Dining Room」も、2005年から07年にかけてキャロル・キングが行っていた「THE LIVING ROOM TOUR」をイメージさせる。キャロルも、自宅にリスナーを招く演出のコンサートを行っていたのだ。その1曲目も弾き語り。「ウェルカム・トゥ・マイ・リヴィング・ルーム」だ。どことなく「Singin’ In My Dining Room」に近い。

「キャロル・キングは私が最も憧れているシンガーソングライターです。彼女の『君の友だち』『ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ』『ビューティフル』はずっと聴きつづけています。温かくて、優しくて、心豊かになれます」

 「帰れない二人」は、陽水が忌野清志郎と共作したバラードの名曲。歌詞は2人が1行おきに書いたといわれている。しかし、若い澤田は、この曲を陽水の「氷の世界」ツアーにコーラスで参加して知った。

「実は、陽水さんのツアーに参加することになり、初めて『氷の世界』を通しで聴きました。1970年代にあんな素晴らしい作品があったとは。しかも、どの曲も40年経ってもまったく色あせません。中でも『帰れない二人』と『白い一日』はステージの上にいてもうっとりするほど」

 「君の友だち」と「帰れない二人」を澤田は自分のステージでも大切に大切に歌い上げた。

『I’m home.』

発売中(2014年1月18日発売)
CD 1,000円+税 HUCW-10510
https://www.youtube.com/watch?v=rvEhEVWi7oc

  • 澤田かおり

    1985年、米ワシントン州シアトルで生まれる。3歳からクラシックピアノ、エレクトーン、作曲をヤマハ音楽院学ぶ。桐朋女子高等学校作曲専攻卒業。2005年に渡米、ハーバード大学サマースクールEnglishプログラムを受講した後、マサチューセッツ州ボストンにある音楽の名門バークリー音楽院入学。09年に帰国。13年に音楽を手掛けた東芝「LED10年カレンダー」のCMが複数の広告賞を獲得する。12年にインディーズレーベルから、アルバム『PRISM』をリリース。13年にMISIAのデビュー15周年ツアーにコーラスで参加。14年は井上陽水の「氷の世界」ツアーにコーラスで参加。最新作は『I’m home.』(ハッツ・アンリミテッド 3曲入り¥1,000+税)。7月3日に東京・渋谷「shibuya gee-ge.」でライヴを行う。
    http://kaorisawada.com/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

ヘアメイク:西田裕美子 https://www.facebook.com/yumikonishida.deuce
撮影:萩庭桂太