4月28日夕刻、東京神田淡路町WATERRAS広場野外特設ステージ。

 ギターを手に小野リサが登場した。

 「JAZZ AUDITORIA 2014」の2日目。強いビル風に煽られながら、小野が「イパネマの娘」を歌い始める。バックは18人編成のブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラだ。

 会場はすでに満席。

 広場全体に人が溢れ、周囲のビルやステージの向かいを走る外堀通りにも見る見る人が増えていく。

 強風のせいか最初はやや険しい表情だった小野。

 しかし、その表情も徐々にほころんでいく。

 「グッディ・グッディ」「モア」、そしてラストのボサ・ノヴァのヒットメドレーを歌う頃には、ステージと会場、さらに周囲のビルや外堀通りの歩道に立ち止まる人までも一つになっていった。

「ビッグバンドとの共演は初めてでした。オーケストラは譜面を見て演奏しますよね。でも、私はその時の気持ちに素直になって自由に歌い、ギターを弾きます。かみ合うのかしら――。18人の音圧に酔ってしまわないかしら――。不安を抱えたままステージに上がりました」

 しかし、杞憂に過ぎなかった。

「ビルに囲まれた野外ステージで強風にさらされる厳しい条件だったにもかかわらず、とても気持ちよく歌えました。ベースとドラムスが素晴らしかったおかげ。ドラマーの則竹裕之さんが気持ちよくのせてくれました」

 7月には同じバンドで伝統あるスイスの「モントルー・ジャズ・フェスティバル 2014」に参加する予定。

 2014年の夏は、小野リサにとって忙しい季節になりそうだ。

 5月21日には、新作『ブラジル』をリリースしたばかり。その楽曲をもってモントルーの他にもフェスティバルの出演が続く。

 東京や名古屋でもライヴを行う予定だ。

『ブラジル』

発売中(2014年5月21日発売)
CD 3,000円+税 MUCD-1296
http://www.dreamusic.co.jp/artists/japanese/lisa-ono/mucd-1296.html

  • 小野リサ

    ボサ・ノヴァ・シンガー。ブラジルのサンパウロで生まれる。1989年にアルバム『カトピリ』でデビュー。『ナナン』『ミニーナ』『サウダージ』など質の高い作品をリリースしていく。2007年から10年にかけて“音楽の旅”というテーマで、ロック、ソウル、ジャズ、アジア音楽などをボサ・ノヴァのテイストにアレンジしたアルバムをリリース。その後、日本に目を向け『Japão(ジャポン)』『Japão2(ジャポン ドイス)』をリリース。最新アルバムは『ブラジル』(ドリーミュージック・¥3,000+税)。

    6月5日(木)「小野リサ ボサノヴァコンサート」東京・よみうり大手町ホール
    6月24日(火)~27日(金)「小野リサ“BRASIL” with special guest マリオ・アジネー」ブルーノート東京
    7月3日(木)・4日(金)「小野リサ ニューアルバム“BRAZIL”ツアー」名古屋ブルーノート
    7月20日(日)「小野リサ ボサノヴァ・ナイト」八ヶ岳高原ロッジ
    8月23日(土)「LISA ONO Heartfull Acousutick Live 2014 」横浜・関内ホール
    http://onolisa.com/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影協力:ブルーノート東京 http://www.bluenote.co.jp/jp/
撮影:萩庭桂太