見たり見なかったりしていたNHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』であるが、高畑充希の突然の美声の次に目が離せなくなったのが、ふ久ちゃんの夜這い騒動である。

 ヒロインのめ以子の長女で、子どもの頃からちょっと変わっていたふ久ちゃん。思ったことにだけ、まっすぐ突き進むこの周囲泣かせのキャラクターだ。子役が演じているときから私はかなり気になっていた。この子は大きくなっても何かやらかすに違いない。そういう見え見えな伏線をよっこいしょと担って登場した感があった。

 そうして美しい娘になったふ久ちゃんは、期待通り、やらかしてくれた。

 好きだった青年、諸岡くんが出征するに当たり、いきなり子どもが欲しいと迫り「うち、諸岡くんのこと、複製したい」と、のたもうたのである。

 ここ数年、NHKは朝のお茶の間にふさわしくあろうとする貞節観念を捨てたのであろう。

 画面にアップになったふ久ちゃんはいきなりブラウスのボタンを外しはじめたのである。諸岡くんは必死に抵抗した。そこへふ久の弟が乗り込んで「何をしているんですかっ」というところで8時15分になってしまった。

 ふ久の夜這い事件は親の知るところとなり、すったもんだのあげく、2人は結婚し、ふ久はめでたく子どもを授かった。

 そんなふ久を演じたのが、松浦雅である。

 彼女は実に当たり前にふ久を演じていた。演じているのかな、と思えるほど、素直な存在感だった。

 雅は、そんなふ久を演じたことをこんな風に語り出した。

「ふ久と自分は正しいと思ったことをストレートに言っちゃうところが似ています。まあ、私はふ久ほど大胆ではないですけれど。でも、一般的には理解され難いふ久のことを自分はすっと理解できました。変な子だと思わずに共感できたからこそ、演じられた気がします」

 なるほど、私が画面から感じたふ久のリアリティと圧倒的な存在感は、そこにあったのかと思った。松浦雅は面白そうなコである。いや、絶対面白い。私はその大きな瞳に釘付けになった。

  • 松浦雅

    1995年兵庫県生まれ。2012年、第1回JUNONプロデュースガールズコンテストで初代グランプリに。13年に「西原理恵子演劇祭2013!!」の2作品で女優として初舞台を踏み、続けてミュージカル「美少女戦士セーラームーン」舞台「鬼切姫 第ニ章 来るべき日」と舞台4作品に出演。14年、NHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』でヒロインの娘役・ふ久役を演じ、人気を博す。
    公式ブログ http://ameblo.jp/miyabi-matsuura/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:SHIGE
スタイリスト:山本隆司
衣装協力:DRESS、tiit、KINSELLA
撮影:萩庭桂太