雅は幼稚園児の頃から、女優に興味があった。

「ディズニーの映画を2~3日流しっぱなしにしていたら、覚えちゃう子どもだったんですね。歌とかも全部うたえた。プリンセスの役はいいなあと思ったけど、子ども心にすごく冷めたところがあって『日本人のルックスじゃ無理だな』と考えていました。でも、声をやることはできるな、と」

 小学生のときは、薬剤師になりたいとも思った。

「みんなを助けられるからいいなあ、と。でもね、みんな、病気が治ったら薬のことは忘れてしまうでしょう。だから、後々残る仕事がいいなあと思い始めた。生きてる証みたいなものがほしいと。……嫌な子どもでした(笑)」

 ディズニー映画の『白雪姫』のアニメーションを見て、初代の声優がすでに亡くなっていることを知り、それでも永遠にそれが残ることに気づいた。

「永遠に作品として残れば、永遠に誰かを幸せにし続けられる。私もそんな仕事がしたいなあと思うようになった。声優は声だけ。女優なら、生身で演じることも、声だけで演じることもできる。……まあ単純に、有名になってみんなに『へーっ、すごい』って言われたいというのもあったけれど」

 有名になっちゃったね、と言うと、首を振った。

「今はね、有名になりたいとかはないです。後に残るというのも、同時に責任が残るということでもあるとわかったし。いいも悪いも、残る」

 それでも女優でありたいと思う、と言う。私は意地悪なことを聞きたくなった。あのさ、ふ久が諸岡くんを好きになったように、すっごく好きな人ができて「女優を辞めてほしい」と言ったらどうする?

「えーっ。……辞めたくないなあ。そんなこと言う人とは一緒になりたくない。チャウ・シンチーかポール・マッカートニーが言うなら辞めるかもだけど…… あ、それはあり得ないから、辞めない、という意味です!」

  • 松浦雅

    1995年兵庫県生まれ。2012年、第1回JUNONプロデュースガールズコンテストで初代グランプリに。13年に「西原理恵子演劇祭2013!!」の2作品で女優として初舞台を踏み、続けてミュージカル「美少女戦士セーラームーン」舞台「鬼切姫 第ニ章 来るべき日」と舞台4作品に出演。14年、NHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』でヒロインの娘役・ふ久役を演じ、人気を博す。
    公式ブログ http://ameblo.jp/miyabi-matsuura/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:SHIGE
スタイリスト:山本隆司
衣装協力:DRESS、tiit、KINSELLA
撮影:萩庭桂太