2月25日に連続テレビ小説「ごちそうさん」はクランクアップした。撮影が全部終わったとき、どんな気持ちだったのだろう。

 松浦雅は言う。

「泣くかと思ったけど、涙は出ませんでした。いつもヒロインのめ以子を演じる杏さんが『ふ久、おはようさん』と声をかけてくれて、本当のお母さんみたいに感じていました。スタッフもキャストも、あまりにも仲良くなっていて終わりじゃない雰囲気のままでした。いつ終わったんだ、と感じられるのかわからないくらいです」

 雅の撮影期間は4カ月くらいの間。他のメンバーは10カ月以上一緒にいたわけだから、きっと本当に仲良くなったのだろう。

「私は出演者の中では年下だったし、め以子おかあちゃんに甘えたくてしょうがなくて、甘えさせてもらっていました。普段は、年下や同い年くらいの人たちと一緒だと、私って姉さん的なポジションになっちゃうんですけど。だから甘えられて最後まで居心地のいい現場でした」

 女優業を始めてまだ2年。一昨年6月のJUNON ガールズコンテストが芸能界入りのきっかけだった。

「それまでに舞台に出たりはしたんですが『ごちそうさん』は、長丁場だったし。あんまり自分のことはほめたくないんですが、撮り終わって、ちょっとだけ自分をほめてやりたい気がしました。がんばったな、とやっと思えた」

 赤ちゃんを抱く母親役を演じるために、赤ちゃんの楽屋に通いつめ、その子のお母さんにも「寝顔を見て、どんな気持ちですか」とインタビューしたと笑う。

「いつもバラのミストをつけてたんですけど、赤ちゃんには香りが強いかもと思って、それもやめました。そのうち、泣いていても私が抱くと泣き止むまでになったんですよ」

 勢いだけではない、女優魂を感じた。

  • 松浦雅

    1995年兵庫県生まれ。2012年、第1回JUNONプロデュースガールズコンテストで初代グランプリに。13年に「西原理恵子演劇祭2013!!」の2作品で女優として初舞台を踏み、続けてミュージカル「美少女戦士セーラームーン」舞台「鬼切姫 第ニ章 来るべき日」と舞台4作品に出演。14年、NHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』でヒロインの娘役・ふ久役を演じ、人気を博す。
    公式ブログ http://ameblo.jp/miyabi-matsuura/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:SHIGE
スタイリスト:山本隆司
衣装協力:DRESS、tiit、KINSELLA
撮影:萩庭桂太