スペインにひと目惚れ
川上ミネ
- Magazine ID: 1566
- Posted: 2014.03.03
川上ミネさんはスペイン在住の日本人ピアニストだ。彼女の名前を知らなくても、その音楽は耳にしたことがあるかもしれない。愛・地球博のマスコットキャラクター「モリゾーとキッコロ」のテーマソング、あるいはNHKのテレビ番組「猫のしっぽ、カエルの手」に流れる曲、あるいはNHK Hybridcast「旬美暦」で二十四節気の言葉とともに。
また、これまでに日本各地でリサイタルを行い、7枚のCDが発売されているが、それらはミネさんのプロフィールのごく一部でしかない。
ミュンヘン国立音楽大学ピアノ科を卒業したミネさんは、クラシック音楽家としてドイツで音楽活動をしていた。そんなある日、いきなりスペインへ渡り、マドリッド国立音楽大学ピアノ科に入学する。なぜスペインだったのか?
「直感です」
きっぱりとひと言。じつはドイツの次に住む場所を求めて、いろいろな国を訪れていたという。そして、スペインの地に足を踏み入れた瞬間に、この国が好きになってしまったそうだ。
「もう一目惚れというか、スペインに着いた途端にピンと来て。今もその気持ちは変わりません。ひとつの国をこんなに好きになれるなんて、自分でも不思議です」
うっとりとした目で語られると、なんだか最愛の恋人についての惚気話を聞かされているような気持ちになってくる。
次の出会いは、キューバ。偶然耳にしたグラミー賞ジャズピアニスト、チューチョ・バルデスの演奏に感動して、マドリッドの大学を卒業後すぐにキューバへ渡った。ハバナの国立劇場で行ったリサイタルは大成功。その後キューバ国立音楽学校の客員講師として1年ほど現地で暮らした。
「キューバでは、まともなピアノはなく、ペダルがなかったり鍵盤が欠けていたり。国立劇場のピアノは、開けたらコウモリが出てきたんですよ! キューバで鍛えられたので、どんなピアノでも音を出せるようになりました」
中南米の各国、さらにアジア各地を演奏して回った。のちには憧れの人チューチョ・バルデスとの夢の共演も果たした。
この後も現在に至るまでミネさんの“世界の旅”は続き、あらゆるスペイン語圏で活動してきた。しかし到底語りきれないので、興味のある方は公式ホームページのプロフィールをご覧いただきたい。彼女と一緒に世界を旅している気分になれること請け合いです。
世界各国の中で惚れぬいた国、スペイン。その気持ちが通じたかのように、2013年、ミネさんはスペインとともに大きな事業に関わることになる。
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出演:川上ミネ
ピアニスト・作曲家。ドイツ・ミュンヘン国立音楽大学ピアノ科卒業。スペイン・マドリッド王立音楽院ピアノ科卒業。元キューバ国立音楽大学講師。京都とマドリッド(スペイン)に拠点をおきながら日本・スペインを中心に世界各国において演奏・作曲活動を行っている。2004年にはグラミー受賞ピアニスト、チューチョ・バルデスと共演し、キューバで大成功を収めた。日本においても05年、“愛・地球博”のオフィシャルマスコット「モリゾーとキッコロ」のテレビアニメの全ての音楽制作を務めるなどの事業に参画。2013年には日本スペイン交流400周年記念事業の公式テーマ音楽担当として公式オリジナルテーマを作曲し、日本スペイン交流400周年開幕記念式典での芸術監督を務めた。この音楽会はスペイン全国に於ける「国が最も推薦するコンサート」として、全国公立劇場のネットワーク(La red de teatros nacional=通称ラ・レッド)に推奨された。NHK Eテレで放送中の「猫のしっぽ カエルの手 京都 大原 ベニシアの手づくり暮らし」の音楽を担当、その楽曲を収録した4枚目のソロアルバム『馨(かおり)』(10年)は、自然と共に生きるベニシアさんのライフスタイルに溶け込むような曲ばかりが収録されている。また、13年公開の映画『ベニシアさんの四季の庭』のサウンドトラックをピアノ一台で仕上げたことも話題になった。14年3月11日には世界遺産であるスペイン・コルドバのメスキータ「聖マリア大聖堂」にて祈りのコンサートを開催する。ボリビアなど南米を中心に音楽を通して国際交流する演奏活動も展開している。
MINE KAWAKAMI ホームページ http://www.minekawakami.com
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取材・文:加藤いづみ
コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。
https://www.facebook.com/mi.company
撮影:萩庭桂太