“追っかけ”も世界をめぐる
川上ミネ
- Magazine ID: 1404
- Posted: 2014.03.07
世界各地の変わった場所で演奏してきたミネさんだが、王立劇場でも、清水の舞台でも、緊張することはないという。キューバの道端で弾くのも変わらないそうだ。
「場所が変わるごとにいちいち反応していたら、弾けないですよね。どこで弾くのも同じだし、観客が3人でも2000人でも変わらない」
演奏をするのはもちろんミネさん一人だが、聴き手だってそれぞれが自分の耳で聴いているのだから、一対一。何人に増えてもその関係は変わらないというわけだ。
今年は3月だけでも4回、リサイタルの予定があり、いずれも1000人から2000人規模の会場だとか。「最近は400周年ということもあり、スペイン国内で呼ばれるようになった」そうだが、マネージャーの手腕もあるだろう。
マネージャーを務めるのは、通訳のアルバイト時代に出会ったというスペイン人の夫君。化学者の彼が、いまでは音楽も勉強し、彼女のマネージメントを担当している。仕事を共にすることで、心置きなく家を空けられるようになった、とは妻のホンネ。
3月11日には、コルドバの世界遺産であるメスキータの聖マリア大聖堂で演奏する予定だ。通常であれば宗教音楽以外はタブーとされているこの教会で、彼女自身のオリジナル曲を弾くことは異例中の異例。
「これは祈りの曲である、と司教が認めてくれたということが私にとって何よりも誇りに思えることですし、全身全霊を傾けて弾くつもりです」
7月15日には王立劇場で行われる「日本スペイン交流400周年事業」の閉幕式が控えている。はたして終幕にはどのような曲が演奏されるのだろうか。
また、今年の12月にはボリビアツアーが予定されているそうだ。ボリビアは4月23日に日本との国交樹立100周年を迎える。ボリビアでは以前ツアーを行ったことがあり、現地ミュージシャンとのジョイントも期待できそうだ。
「以前ボリビアを訪れたときには、アマゾンにも行きました。森には一面ホタルの光、空には満天の星が輝いて、それはきれいだった! そうそう、ピラニアの刺身っておいしいんですよ」
どうやら、マイ包丁の出番もありそうだ。包丁を携えて世界をめぐるピアニスト、川上ミネ。その真骨頂は、やはりリサイタルにあると思う。だが、会場は世界各地、待っていても聴く機会が少ないので、世界を股にかけて追いかけるファンもいるらしい。その気持ち、わかるようになってきた。
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出演:川上ミネ
ピアニスト・作曲家。ドイツ・ミュンヘン国立音楽大学ピアノ科卒業。スペイン・マドリッド王立音楽院ピアノ科卒業。元キューバ国立音楽大学講師。京都とマドリッド(スペイン)に拠点をおきながら日本・スペインを中心に世界各国において演奏・作曲活動を行っている。2004年にはグラミー受賞ピアニスト、チューチョ・バルデスと共演し、キューバで大成功を収めた。日本においても05年、“愛・地球博”のオフィシャルマスコット「モリゾーとキッコロ」のテレビアニメの全ての音楽制作を務めるなどの事業に参画。2013年には日本スペイン交流400周年記念事業の公式テーマ音楽担当として公式オリジナルテーマを作曲し、日本スペイン交流400周年開幕記念式典での芸術監督を務めた。この音楽会はスペイン全国に於ける「国が最も推薦するコンサート」として、全国公立劇場のネットワーク(La red de teatros nacional=通称ラ・レッド)に推奨された。NHK Eテレで放送中の「猫のしっぽ カエルの手 京都 大原 ベニシアの手づくり暮らし」の音楽を担当、その楽曲を収録した4枚目のソロアルバム『馨(かおり)』(10年)は、自然と共に生きるベニシアさんのライフスタイルに溶け込むような曲ばかりが収録されている。また、13年公開の映画『ベニシアさんの四季の庭』のサウンドトラックをピアノ一台で仕上げたことも話題になった。14年3月11日には世界遺産であるスペイン・コルドバのメスキータ「聖マリア大聖堂」にて祈りのコンサートを開催する。ボリビアなど南米を中心に音楽を通して国際交流する演奏活動も展開している。
MINE KAWAKAMI ホームページ
http://www.minekawakami.com
日本スペイン交流400周年開幕記念音楽会(日本スペイン交流400周年公式サイト内) http://www.esja400.com/jpn/今井翼×サムライ支倉 大いなる旅への挑戦 -
取材・文:加藤いづみ
コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。
https://www.facebook.com/mi.company
撮影協力:セルバンテス文化センター東京 http://tokio.cervantes.es
撮影:萩庭桂太