杏里さんの最新作のタイトルは『Surf City -Coool Breeze-』。デビュー35周年記念作品である。

 彼女には数多くのヒット曲があるが、1980年代前半の曲を中心にリアレンジ、リヴォーカル録音されたセルフカバー作品だ。

 今回撮影とインタビューに応じてくれたのは、TSUTAYAのグループが新しく作ったレコード会社、アイビーレコードの社内。まだ昭和時代だった’80年代の音楽を21世紀に生まれた会社から再リリースするわけだ。

 撮影で、杏里さんは次々と服装をチェンジしていくが、ファッションやメイクは今なおナチュラル系だ。

 さて、アルバムの1曲目は「気ままにREFLECTION」。キャッチーなイントロと「Break Out!」という女性コーラスで一気にテンションが上がる。

 間奏のギターソロは’80年代テイストだ。曲間なしで2曲目は「悲しみがとまらない」。友達に彼を奪われる女の子が主人公の1983年の大ヒットソング。ヒットした当時、この歌詞は女子たちに強い共感を呼んだが、彼を友達に奪われた経験のある女の子が多かったのだろうか? バックのギターのカッティングも’80年代テイスト。

 続いて「BRING ME TO THE DANCENIGHT」~「GONE WITH THE SADNESS」のメドレーから「Good Bye Boogie Dance」。

 ディスコティックなナンバーだ。間奏はやはり’80年代の定番ともいえる、スラップ奏法(バッキン! バッキン! というチョッパーベースのことです)のベースソロとサックスソロ。

「このアルバムを聴いて日本中が浮かれまくっていた’80年代を思い出してほしい」

 と杏里。

 バブル全盛のあの頃は確かにみんなハイテンションだった。週末の都心部は人であふれ、タクシーは朝3時を過ぎないとつかまらなかった。

「私自身も朝までディスコをはしごして、一睡もしないで仕事に行きました。仕事も遊びも命がけでした」

 そんな時代がよみがえってくる。

『Surf City -Coool Breeze-』 2013.7.10発売

初回特典盤 CD+DVD 3,600円(税込) QYZI-10007
通常盤 CD 3,000円(税込) QYCI-10007
http://anri-music.com/disc/

  • 出演:杏里

    シンガー・ソング・ライター。神奈川県出身。1978年に「オリビアを聴きながら」でデビュー。「悲しみがとまらない」「思いきりアメリカン」「SUMMER CANDLES」など数々の名曲を歌ってきた。最新アルバムは、1980年代の自分の曲をセルフカバーした『Surf City』(3,000・アイビーレコード)。まもなく「杏里コンサート2013 Surf City」がスタート。7月13日(土)松戸・森のホール、31日相模女子大グリーンホール、8月2日中野サンプラザホール、30日かつしかシンフォニーホール、9月13日金沢歌劇座。詳細は http://anri-music.com/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影:萩庭桂太