若き才能が結集していた
杏里
- Magazine ID: 1286
- Posted: 2013.07.04

杏里の音楽はなぜあれほどまでにヒットしたのか――。
彼女の音楽は1970~’80年代の洋楽と初期J-POPが気持ちのいいバランスで共存していた。
「私は神奈川県出身で、近くには厚木の米軍基地や座間の米軍住宅がありました。だらか、中学くらいの時にはラジオを抱えて、夢中になってFENを聴いていたんですよ。日本のレコード店では売っていないブラックミュージックが次々と流れてきました」
近くにはアメリカ兵が集まるディスコもあった。
「六本木や赤坂のディスコと違う、街のちっちゃなディスコです。でも、DJがかける音楽は抜群。本当は未成年は入れないんですけれど、兄にせがんで連れて行ってもらいました。DJと親しくなれて、海の向こうの最新のヒットチューンをカセットテープに入れてもらって、毎日聴いていました。そんな思春期の体験がシンガー・ソング・ライターになってからの私の音楽に影響しているのかもしれません」
杏里はファッションモデルを経て高校2年生でデビューした。
デビュー曲は名曲「オリビアを聴きながら」。
その後も「思いきりアメリカン」「CAT’S EYE」「悲しみがとまらない」……などの名曲・ヒット曲を生んだ。
「思いきりアメリカン」の作曲は小林武史。その後サザンオールスターズを手掛け、Mr.Childrenを世に送り出し、現在もプロデューサーとして活躍する彼の処女作がこの曲である。
小林は、かつて杏里のバンドのキーボードプレイヤーでもあった。最新アルバムのタイトルチューンの「Surf City」も、サザン・ミスチル以前の小林の名作の1つだ。
「悲しみがとまらない」のアレンジは角松敏生。メジャーになる前の角松は『Surf City』に収録されている「WINDY SUMMER」や「I CAN’T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME」も手掛けた。
小林武史や角松敏生といった、その後、日本のポップシーンで大活躍する音楽家たちは、かつて杏里の音楽のフィールドで才能を磨いていたのだ。
『Surf City -Coool Breeze-』 2013.7.10発売
初回特典盤 CD+DVD 3,600円(税込) QYZI-10007
通常盤 CD 3,000円(税込) QYCI-10007
http://anri-music.com/disc/
-
出演:杏里
シンガー・ソング・ライター。神奈川県出身。1978年に「オリビアを聴きながら」でデビュー。「悲しみがとまらない」「思いきりアメリカン」「SUMMER CANDLES」など数々の名曲を歌ってきた。最新アルバムは、1980年代の自分の曲をセルフカバーした『Surf City』(3,000・アイビーレコード)。まもなく「杏里コンサート2013 Surf City」がスタート。7月13日(土)松戸・森のホール、31日相模女子大グリーンホール、8月2日中野サンプラザホール、30日かつしかシンフォニーホール、9月13日金沢歌劇座。詳細は http://anri-music.com/。
-
取材・文:神舘和典
1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。
新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html
撮影:萩庭桂太