「夏、海、杏里」

 杏里が1980年代の曲をセルフカバーしたアルバム『Surf City -Coool Breeze-』のキャッチフレーズだ。

 ’80年代は日本人の音楽の聴き方が大きく変わった。もっとも大きな変化はレコードからCDへの移行だろう。そして、ソニーがウォークマンを発売し、カーコンポが充実し、良質な音を屋外で楽しめる時代が訪れた。

 音楽が街へ出たことで、暮らしが映画になった。歩きながら、クルマを運転しながら、目の前を流れていく景色にBGMがつくからだ。

 さらに、何気ない日常が物語性を帯びた。

 女の子にふられたり、仕事で大失態をおかしたりして落ち込んでいるとき、その心に音楽がかぶることで、ドラマティックな演出がほどこされるからだ。

 今回収録されている「WINDY SUMMER」と「最後のサーフホリデー」は夏に海へドライヴする時に聴くカセットの定番曲だった。

 特に「WINDY SUMMER」を聴くと、第3京浜~横浜新道~横浜横須賀道路の風景が浮かぶ。

 逗子インターから逗葉新道を抜けると、逗子海岸と出会う。
 渚橋の交差点から134号線を鎌倉方面へ向かう。
 材木座手前のトンネルは夏への入り口だ。
 まあるいトンネルの出口をフレームに相模湾がぐんぐん大きくなってくる。

 そのタイミングでカーコンポから「WINDY SUMMER」が流れてくると一気に気持ちが上がった。

「あのキラキラしていた’80年代の夏をリスナーの皆さんに思い出していただきたかったから、レコーディングもあの頃のようなやり方をしました」

 杏里は話す。

「できるだけデジタルに頼らないで、バンドは手弾きで楽器を演奏しています。私の声もレコーディング中どんどんオリジナルを歌った時の感覚を取り戻していきました」

『Surf City -Coool Breeze-』 2013.7.10発売

初回特典盤 CD+DVD 3,600円(税込) QYZI-10007
通常盤 CD 3,000円(税込) QYCI-10007
http://anri-music.com/disc/

  • 出演:杏里

    シンガー・ソング・ライター。神奈川県出身。1978年に「オリビアを聴きながら」でデビュー。「悲しみがとまらない」「思いきりアメリカン」「SUMMER CANDLES」など数々の名曲を歌ってきた。最新アルバムは、1980年代の自分の曲をセルフカバーした『Surf City』(3,000・アイビーレコード)。まもなく「杏里コンサート2013 Surf City」がスタート。7月13日(土)松戸・森のホール、31日相模女子大グリーンホール、8月2日中野サンプラザホール、30日かつしかシンフォニーホール、9月13日金沢歌劇座。詳細は http://anri-music.com/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影:萩庭桂太