美し過ぎる太腿
Sharo
- Magazine ID: 1533
- Posted: 2013.06.03
この連載のカメラマンである萩庭桂太は、ここ1カ月近く、疲れからか声が出にくくなっている。しかしカメラマンというのはそんなにしゃべらなくてもできる仕事である。本人も小さなしわがれ声で言う。
「いやあ、カメラマンでよかったよ。声が出にくくなってから、撮影のとき、自分がいかにムダな話ばっかりしていたか、よーくわかった。今は喋りづらいから『あ、別に今この話無理にしなくてもいいや』ってセーブするんだよね……」
神様はいろんなふうにして人を導くものだと思わずにはいられない。しかも、ムダな話をしなくなったことで、最近、いっそう仕事が増えているというから、皮肉なものである。
そんなわけで、すこしずつ回復に向かうハギニワだが、その日も、えらい派手な美女と歩いていた。インタビューに遅刻しないようにと、九段下のドブ川の脇を全速力で走っていて、出くわしたのである。
「あ、森さん、この人、今日取材するSharoちゃん」
「こんにちは。Sharoです」
一緒にエレベーターに乗る。私は心の中で焦った。え? Sharo? Sharonじゃなくて? 私はてっきりSharonだと信じ込み、Sharonさんについて下調べをしてきたのだった。しかし、今さらどうしようもない。しかも、とっさに口をついて出たのが、「あ、あの、インターネットで歌の歌詞を見ましたよ……」というものだった。
彼女はきょとんとした。
「え? それ、日本語でした? 私、オリジナル曲はないですよ……」
彼女はにこにこと笑っていたが、内心、インタビュアーに不安を感じたに違いない。
ハギニワの事務所にたどり着くと、美しい写真があり、刺激的な衣装でおみ足を振り上げる彼女の姿があった。「へええええ。いい脚ですねえ。太腿がいいよね……」
私はとにかくほめちぎりながら、Sharoちゃんの名前を間違っていたことをごまかし切ろうとしたのであった。
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出演:Sharo
福岡県生まれ。早稲田大学在学中に東宝ミュージカルアカデミーのオーディションに合格、第1期生に。その後、ライブ活動を始め、役者、タレント活動へとフィールドを広げる。9月3日に渋谷マウントレイニアホールでライブを開催。株式会社スタッフ・アップ所属。
プロフィール http://www.staff-up.net
公式ブログ http://ameblo.jp/sharoblog/ -
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
ヘアメイク:宮内直人 http://www.sugar-makeup.com
撮影:萩庭桂太