圧倒的な存在感
濱田めぐみ
- Magazine ID: 1530
- Posted: 2013.05.13
昨秋、青山劇場で上演された『アリス・イン・ワンダーランド』を観た。
ヒロインの女流作家、アリス役はYOUR EYES ONLYにも登場したことのある安蘭けいさん。その娘を演じたのはやはりYOUR EYES ONLYでキュートな表情を見せてくれた高畑充希さん。知っている顔の多い舞台というのは、いつにもまして一生懸命入り込んで観てしまう。仕事冥利に尽きる時間でもあるし、またその人たちにお会いしたときに感想を言えるようにと観察力もフル回転するので、神経も使う。
その舞台に、圧倒的な歌唱力を誇る女優がいた。歌唱力だけではない。その存在感もさるものだ。たとえるならば『白鳥の湖』の中の「黒鳥」。彼女はヒロインを翻弄する、ヒロインのなかのもう一人の「悪い私」を演じていた。
それはもう観ていて「ワルー」という声をあげたくなるような毒気だ。観るのがつらい。しかし歌がものすごく上手いので、つい引きずりこまれてしまう。
ストーリーのなかでも主人公は「悪な自分」にふりまわされる。悪は、甘い。彼女は演技と歌で観客にその感じを体感させてくれたのだ。
舞台が終わった帰り道、萩庭桂太と私は「あれは誰ですかね」と、話し合った。
「すごい存在感でしたね」「いやあ、歌、うまかったね」「あの人、いつか取材しましょう」「絶対取材しよう」
その人こそ、今週紹介する濱田めぐみさんである。劇団四季に入団後3カ月で『美女と野獣』に抜擢され、初演『ライオンキング』、初演『アイーダ』などのヒロインを務めてきた、並はずれた才能の持ち主。
今は四季を退団、さらに活動の幅を広げる期待の女優だったのである。
-
出演:濱田めぐみ
1972年福岡県生まれ。95年に劇団四季オーディションに合格、3カ月後に『美女と野獣』ヒロインでデビュー。以降、初演『ライオンキング』、初演『アイーダ』、初演『ウィキッド』でもヒロインに。2010年に退団。2012年『ボニー&クライド』で舞台復帰。同年初のソロコンサートは5分で完売。6月にはBunkamuraオーチャードホール『ワイルドホーン・メロディーズ』、7月には帝国劇場『二都物語』に出演する。
-
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太