インタビューはイヌの入れない、公園内の休憩所で行われた。

 寒いのに、スタッフの皆さんも萩庭もイヌと一緒に外にいるという。濱田さんと私は、温かい「おーいお茶」を手の中で転がしながら向かい合った。

 まず『アリス・イン・ワンダーランド』の感想から話すと、彼女は屈託のない笑顔を見せてくれた。

「マッドハッター。あの役は難しかったです。救いのない悪者キャラでしょう? 台本を読んであまりにひどいキャラなので、稽古が始まるときに主役の安蘭けいさんに『嫌いにならないでくださいね』と挨拶しにいったくらいでした」

 しかし彼女はそこから役を作り始めた。

「だいたい、人間じゃないんですものね。彼女の心のネガティブな部分、ネガティブな感情が作り上げた化け物、とでもいいますか。しかもブロードウェイでは男性が演じているんです。男性がネガティブさを表現すれば、硬質感や無理やりっぽい強さを出せるでしょうが、それを女性が演じるとしたらどう表現すべきか、と考えました。色仕掛け。意地悪さ。冷酷さ……かなと。観ている人に『あの人もいいところあるよね』と思われたら失敗なんですよ。でも『自分にもそういうところがあるかも』とぎくっとさせないといけない。いけない好奇心、恐る恐るの興味をかき立てられたらいいなと思いました」

 役のキャラクターを作るとき、一番大事にしていることは観る人の印象だ。

「観終わったときに『こういう人だったね』という雰囲気、匂い、感じみたいなものが大事だと思います。観た人なりに共通認識が生まれつつ、どこか曖昧さや普通に考えるとわりきれないところもある、という役が心に残る気がします」

  • 出演:濱田めぐみ

    1972年福岡県生まれ。95年に劇団四季オーディションに合格、3カ月後に『美女と野獣』ヒロインでデビュー。以降、初演『ライオンキング』、初演『アイーダ』、初演『ウィキッド』でもヒロインに。2010年に退団。2012年『ボニー&クライド』で舞台復帰。同年初のソロコンサートは5分で完売。6月にはBunkamuraオーチャードホール『ワイルドホーン・メロディーズ』、7月には帝国劇場『二都物語』に出演する。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太