デビューは22歳。劇団四季のオーディションに受かってからまだ3カ月で『美女と野獣』のヒロインに抜擢された。

「その前は舞台芸術学院と音楽座にそれぞれ2年いました。若かったし、とにかくやらなきゃと。でも実はオーディションって、受かってうかれていたらダメで、そこからやることがたくさんあるんですよね。受かってから初日までにやるべきことが大事。自分の時間軸のなかで、そこを中心にしないと」

 オーディションは受験とは違う。おそらく受けたことのある人にしかわからない独特の緊張感と、落ちたときの全否定感。そして受かったときの全宇宙の頂点に立ったかのような高揚感。しかし彼女はそれを「通過点」だと認識するようになった。

「落ちる、受かるは一つの通過点でしかない。四季にいた中盤以降は、受かったときのイメージをつくって、そこから逆算できるようになりました。自分がライバルです。他人を見ていると置いていかれてしまう。そうやってへこたれたときの自分を知っているから今はへこたれない。折れない自分を作ったんです」

 折れない自分ができつつあったとき、劇団四季を辞め、今の事務所へ移籍することになった。

「自分には芝居しかできないので、受け皿がないと不安でしたから。今はその中で自由にやらせてもらっています」

 芝居が自由になっていくということを、日々実感している。

「数年前までの自分は自分を縛っていましたね。こうしなければならない、と、自分で決めていました。今は視野が少し広がって、自分を許すことができます。いろんな人に助けられて、また人の輪が広がっていく楽しさを味わっています」

 話していて気づいた。舞台の彼女のあの目力は、普段の彼女にはない。この人は、本当に舞台でこそ輝く舞台人なのだと。

  • 出演:濱田めぐみ

    1972年福岡県生まれ。95年に劇団四季オーディションに合格、3カ月後に『美女と野獣』ヒロインでデビュー。以降、初演『ライオンキング』、初演『アイーダ』、初演『ウィキッド』でもヒロインに。2010年に退団。2012年『ボニー&クライド』で舞台復帰。同年初のソロコンサートは5分で完売。6月にはBunkamuraオーチャードホール『ワイルドホーン・メロディーズ』、7月には帝国劇場『二都物語』に出演する。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太