私は基本、物書きである。だが、頼まれると嫌とは言えない性格で、編集や講演やコンサルタントやプレスみたいな仕事をしてしまうこともある。この夏でまる3年になる、湘南発のウェブマガジン、BRISAの編集長というのも、そんな仕事のひとつだ。湘南に住んでもいないのに……。

 しかしこのBRISA、地元の女子たちに任せっきりにしているので、なかなか評判がよろしい。それになんといっても地元の女優さんたちがこぞって応援してくれているのだから百人力だ。たとえば創刊号のスペシャルインタビューに出てくださったのが、今回登場する鶴田真由さんであった。

 何を隠そう、鶴田さんは生まれも育ちも鎌倉。そうしてそのとき、彼の地でインタビューさせてもらった鶴田さんは、東京でインタビューさせてもらったときの鶴田さんとは何かが違った。海辺の一軒家カフェに現れた彼女は、タンクトップにパレオのような巻きスカート姿。すっかり休日モードが漂い、その力の抜けた感じがまた妙に色っぽかった。

「まあ、ゆっくりやりましょ」

 そう言って腰掛けた彼女を見ていて、鎌倉は時間の流れ方が東京とはまるで違う、と気づかされた。

「地元の人たちは、晴れたら海に行っちゃうし、風が強いから家にいる、みたいな自然任せ。東京にいると、明日までにこれをやって、とか、これはいつまでにできるからこちらの準備をしておいて、なんて、常に『ねばならない』感じがあるけど、こちらの人にはない(笑)。だから、地元のイベントの仕事はいつも『大丈夫?』とハラハラするけど、最後には帳尻が合う。それはいつも目的がお金儲けだからじゃなくて、純粋な表現だから、神様が味方してくれるのかもしれないけど。だから私も、こっちにいるときは、イライラするのはやめようと思ってね」

 きちきちしていない分、ものづくりの力は大きくなるのかもしれない。鎌倉の人たちが考えることはアーティスティックで、時々、あっと驚かされる。

 だからこそ、鶴田さんは鎌倉から発信するものを大事にしている。今回、そんな気持ちから、とうとうひとつの舞台を作ることになった。

『花音』。かのん。どんな舞台になるのか、東京にいても鎌倉時間で、ゆったり話を聴いてみよう。

  • 出演:鶴田真由

    女優。映画、テレビドラマ、舞台、CMなどの活動のほか、自然体で飾らない姿と独自の視点からのコメントが支持を得て、旅番組、ドキュメンタリー番組への出演も多い。96年には日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。BS時代劇「酔いどれ小籐次」(6月14日~BSプレミアム)、映画「めめめのくらげ」(4月26日~)、「さよなら渓谷」(6月22日~)、「ほとりの朔子」(今春公開予定)、舞台「花音」(5月18日・19日鎌倉浄智寺)に出演。
    http://tsurutamayu.com/
    http://camp-fire.jp/projects/view/602

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
衣装協力:YARRA http://yarra.co.jp/
撮影:萩庭桂太