『花音』のような自発的な芝居のほかにも、この一年、鶴田さんは、次々と映画やドラマに出演したりで大忙しだ。一観客としてみていると、鶴田さんはいつどんな時でも、魅力的に役を演じているように見える。とてもいいペースで、自分の可能性をひとつずつ無理なく開いていく女優、という印象が強い。

「出会いも運も、好奇心から、ですよ。面白いな、って反応して、じゃ、やってみようかとか、行ってみようかとか、そんな繰り返し。だから私、仕事のような、仕事でないようなことが多いんだろうな(笑)」

 旅絡みの仕事も多い。過日、石川県の奥能登を旅した。

「数年前から『ディスカバー・ジャパン』という雑誌で連載をしていて、まずテーマが『古事記』だったのですが、それがひと通り終わったので、今度はそれ以前のものが残るところへ行きたいね、と。たとえば奥能登で、舳倉島というところへ行ったんですが、ここは古代に大陸から渡ってきた人が住んだらしく、アニミズムの匂いが残っているんです。至るところに石が積んであったりして。日本海はものすごく船が揺れて、どうなるかと思ったけど、着いたらピーカン。まるで『天空の城ラピュタ』に着いたみたいな気持ちがしました」

 奥能登の祭りにも行ってみたい、と目を輝かせる。仕事も旅もどんどん自由になっていく鶴田さんは、一応、主婦でもある。

「結婚してもう10年です。家族というか、パートナーという感じ。お互い、30歳を超えて自分を確立していたし、今さら普通の奥さんになってほしいとも思っていない、という時期に結婚しましたから(笑)」

 お互いがそれぞれに自由でいるべき場所を知っているのだろう。ご主人にお会いしたことはないが、鶴田さんを羽ばたかせる心の大きな人なんだろうなあと想像した。

  • 出演:鶴田真由

    女優。映画、テレビドラマ、舞台、CMなどの活動のほか、自然体で飾らない姿と独自の視点からのコメントが支持を得て、旅番組、ドキュメンタリー番組への出演も多い。96年には日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。BS時代劇「酔いどれ小籐次」(6月14日~BSプレミアム)、映画「めめめのくらげ」(4月26日~)、「さよなら渓谷」(6月22日~)、「ほとりの朔子」(今春公開予定)、舞台「花音」(5月18日・19日鎌倉浄智寺)に出演。
    http://tsurutamayu.com/
    http://camp-fire.jp/projects/view/602

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
衣装協力:YARRA http://yarra.co.jp/
撮影:萩庭桂太