鎌倉から発信する作品を作りたい。鶴田真由さんのそんな思いは、やはりゆるやかな鎌倉時間の中で、熟成されるように出来上がっていった。

「もう2、3年前かな。たまたま、地元出身の役者の井上幸太郎さんの舞台を観に行ったら、とても面白くて、その演出家が『ポかリン記憶舎』という劇団の代表をされている明神慈さんだったんです。『何か一緒にできたらいいですね』というお話をしていたのですが、7月に初めて彼女を鎌倉にお招きして、散策しながらあれこれアイデアを出し合いました。鎌倉に住んでいた文豪の恋文を朗読するというような企画もあったんですが、書き下ろしもありかな、なんてことになっていって……。幸太郎さんを巻き込んで、男と女の二人芝居をやろうということになりました」

 思いもよらない出会いもあった。

「お寺でやらせていただけたらいいね、なんて話していたら、浄智寺の住職の朝比奈さんとばったりお会いしたんです」

 浄智寺は北鎌倉という場所の雰囲気の一部をつくっているような、風情ある寺院だ。

「『本堂を使ってもいいですよ』と言っていただいたのですが、仏像の存在感に勝るものはないので。書院を見せてもらったら、昔ながらの藁葺き屋根で、いっぺんに気に入りました」

 芝居のタイトルが先に浮かんだ。『花音』。かのん、と読む。

「言葉遊びを繰り返すような、時を超えて輪廻していく二人のような。二極化しているかに見えて、その二つの心の境目がなくなっていくような話になると思います」

 地元のクリエイティブチーム、ルートカルチャーとのタッグ。純粋にメイド・イン・鎌倉の舞台は、もうひとつ、新たな試みを進めていた。

  • 出演:鶴田真由

    女優。映画、テレビドラマ、舞台、CMなどの活動のほか、自然体で飾らない姿と独自の視点からのコメントが支持を得て、旅番組、ドキュメンタリー番組への出演も多い。96年には日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。BS時代劇「酔いどれ小籐次」(6月14日~BSプレミアム)、映画「めめめのくらげ」(4月26日~)、「さよなら渓谷」(6月22日~)、「ほとりの朔子」(今春公開予定)、舞台「花音」(5月18日・19日鎌倉浄智寺)に出演。
    http://tsurutamayu.com/
    http://camp-fire.jp/projects/view/602

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
衣装協力:YARRA http://yarra.co.jp/
撮影:萩庭桂太