ある日、萩庭桂太はおそるおそる私に聞いてきた。

「……ヴィジュアル系、取材してみる?」

 ヴィジュアル系とは、X JAPANを起源とするような、あの装飾的な格好をしたロックバンドのことである。私は過去にGacktさんの写真集のお手伝いをしたこともあるが、別に大好きというわけではない。

 が、19歳になる私の姪はヴィジュアル系が大好きで、去年の年賀状メールにはそれらしきバンドの写真がくっついていた。ここでヴィジュアル系を取材させてもらったら、東京でふらふらと何をして生きているのかわからない伯母も、姪にいい顔が出来るというわけである。

「やりますやります! なんていう人ですか」

「ヨシオ、かなあ」

「ヨシオですか……」

 さっぱりわからない。そんな人いたっけ。さっそくレコード会社から資料が送られてきた。そこにはこんな宣伝文句が書かれていた。

「スウェーデンから逆輸入されたヴィジュアル系アーティスト、YOHIO」ん? これ、ヨヒオ、でしょ。萩庭さん、これ、ヨヒオ、ですよ。ヨシオじゃなくて……。

 しかし萩庭桂太が間違えたのも、まあ無理はなかった。

 資料を読まずに音源だけ聴けば、YOHIOはまるで根っから日本人のように日本語で歌っていたからである。

  • 出演:YOHIO

    1995年、スウェーデン生まれ。性別・男。6歳からピアノを、11歳からギターを始め、14歳でヴィジュアル系バンドSeremedyを結成。2010年に初ライブを行い、女のコのようなドレス姿でギターを弾く姿が人気に。2011年3月、同バンドでヴィジュアル系最大のフェス「V-ROCK FESTIVAL’11」のオープニングアクトを務める。2012年4月にはソロデビュー。ソロでの人気も鰻上りで、2013年4月24日、ユニバーサルインターナショナルから初のフルアルバム『BREAK the BORDER』をリリースする。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太