ファンタジーに生きる人
EIKO
- Magazine ID: 1504
- Posted: 2012.10.29
最近、30代以下の人と話していると「ファンタジー」好きが増えたのを実感する。私の世代は、ファンタジーといえば、いわゆる海外ものでハヤカワ文庫みたいなものしかなかった気がする。少女漫画も一条ゆかりのようなドロドロ系から『エースをねらえ!』のようなスポーツ系、岩館真理子のようなさわやか初恋系まで、リアリティを追求したものが多かった。
『キャンディ♥キャンディ』でさえ、1人の女の子が自分の意志と努力でさまざまな困難を乗り越えていく、というアメリカ女流文学的なお話ではなかったか。
しかしその後の世代にはファンタジー系の漫画が増えた。苦しいことがヒロインに降りかかったとき、助けてくれるのは超能力だったり、宇宙人のような、ありえない世界から来た人たちだったり、ある日突然備わった自分の潜在能力だったりするのである。
登場人物は現実の世界にはないような格好をして現れる。背景も設定も、現実を排除したところから始まる。だがこのファンタジー系の漫画が現れたことで、日本の漫画は一気に世界的に広がっていったとも言える。
日本的な慣習や息苦しい組織を一切描かないことで(あるいはまったく別のものにデフォルメして置き換え、それを悪とすることで)、世界中の子どもたちがそこに「夢を追い求める」ワクワク感を共有することができたのである。
今回登場するEIKOは、言ってみればファッションにおけるファンタジー系の人である。
「ドレスはもちろん、ジュエリー、フラワーアートとトータルにファッションを提案しています。私はもともと、現実ではなくファンタジーの世界に生きてきたようなところがあるんです。それで広い世界観を表現するためには、ドレスだけではダメだなと思うようになったんです」
「はい……」と、私はEIKOの目を見つめた。浮世離れしきった人というのは、無防備にこちらの目を見てはずさない。この人もそうだなあと思った。だいたい、ファンタジー世界に生きるという意味が、想像はつくが、今ひとつ理解し難い。
「私は記憶にないんですが、どうやら2歳くらいの頃から毎日絵を描いていたそうです。それもお姫様の絵。それから母のドレッサーで熱心にお化粧していたり」
そこまでは普通の女の子なら誰でもやることである。どうやらファンタジーの世界の住人になったのはもっと後のことだったようだ。
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出演:EIKO
大学在学中にバルセロナに留学、ヨーロッパでそのセンスを磨く。夫のグッドニー・グドナソン氏と出会い、ジュエリー制作を始め、ダンサーとしてもアメリカなどへ進出。10年前に世界を相手にジュエリーブランドを立ち上げ、今に至る。
http://www.eikosworld.com/profile.html -
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太