EIKOは中学生のとき、家庭崩壊を経験した。

「両親が離婚して、家にも居場所がなく、学校でも友達ができないから行きたくない。ちょっと非行に走ったりしてふてくされていました。それでどんどん自分の世界に入っていったんです」

 だがもともと頭のいい彼女はそのままふてくされているわけでもなかった。

「漫画、小説は大好きでした。ファッションにも興味が出始めた。今のこの世界から出たい、この目の前の現実を一気に飛び越えたい。海外に出たい、と思うようになったんです。それで英語を必死に勉強して、高校は英語科のある学校へ進学しました。みんながルーズソックスを履いているときに、私は花柄のタイツを履いていましたよ」

 海外のファッションをスナップした雑誌を買い、各国のストリートファッションの違いを考えていた。高校時代の友人には「将来デザイナーになる」と言っていたという。

「英語は高校時代までにマスターしていたので、そのまま上智大学に入り、交換留学生になってバルセロナにも行きました。次は世界で2番目に話す人が多いスペイン語だと思ったんです。語学を確実に身につければ世界でいい仕事ができる、という保守的な考えもあったんです」

 スペインのバルセロナを拠点にヨーロッパ中を旅した。ドイツ人に恋をしたが、ふられて1人、ドイツの森をさまよったこともあったとか。

「黒い森、と呼ばれているところがあるのですが、そこでひとり川を見つめていたら、傷ついた心が本当に癒されて、ああ、ここには精霊がいるのかもしれないと思ったんです。後で考えたら、そんなところへひとりで行くなんて危ないですよね。怖いもの知らずでした」

 バルセロナから帰国後、今の夫であるグッドニー・グドナソンさんが主宰するスピリチュアル・スクールに通ってみた。

「そこでヒーリングを学び始め、天然石と出合ったんです。身につけられるようにとアクセサリーを作り始め、彼が応援してくれて世界中に広めていくことができるようになりました」

 彼女の現実的なスキルとファンタジーの心が一体になったのだろう。EIKOはある意味、ファンタジーを生きられるようになったのだ。

  • 出演:EIKO

    大学在学中にバルセロナに留学、ヨーロッパでそのセンスを磨く。夫のグッドニー・グドナソン氏と出会い、ジュエリー制作を始め、ダンサーとしてもアメリカなどへ進出。10年前に世界を相手にジュエリーブランドを立ち上げ、今に至る。
    http://www.eikosworld.com/profile.html

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太