新幹線「おばドル」たち
新幹線劇場
- Magazine ID: 1500
- Posted: 2012.10.01
萩庭桂太のYOUR EYES ONLYも、いよいよおばさんアイドル、「おばドル」を解禁することになった。
といっても、自ら登場しようというわけではない。
今週はJR東日本の新幹線とホームをテキパキと掃除したり、案内してくれたりするあの人たちを、紹介しようという企画である。これを読んでくださっているあなたは、あの人たちに会ったことがあるだろうか。
私自身、YOUR EYES ONLYに登場した小松美羽さんの取材で長野新幹線に乗ったとき、その人たちの仕事ぶりを目のあたりにした。
彼女ら彼らは清掃が終わると、車両の前に一列に並び、きれいにお辞儀する。関西方面への出張が圧倒的に多い私は、あれ、なんだかJR東海とはちょっと違うな、とその姿に釘付けになったものだった。
ちょうどその頃、どういう運命なんだか、ある方の本のお手伝いで、その人たちの体験談を取材してくれませんか、という話をいただいた。なんとある出版社の社長が直々に編集をするという気合いの入った本であった。社長さんは言った。
「鉄道整備株式会社、通称・テッセイ。JR東日本の子会社で、主に新幹線のお掃除をする会社です。従業員は正社員と“パートナー”と呼ばれるパート社員を含め約820人。平均年齢は52歳。いわゆる現場力のある会社です。相当ハードな仕事なんですが、彼ら彼女らはとてもいきいき仕事をしていて、お客さんとの出会いなどちょっとしたいい話を『エンジェルレポート』という形で提出しているんです。そういう話をしっかり取材して、ストーリーにしてもらいたいんです」
「エンジェルレポート」にはこんなふうに綴られていた。
「21番線で車内清掃作業中のことです。
ホームから熱心に作業を見ている海外からのお客様がいらっしゃいました。
作業終了後、整列、退場の一礼をすると、
ホームで待っていた30人くらいのお客様全員から、
大きな拍手と歓声をいただきました。
見えているからがんばるわけではありませんが、
見えているからもっともっとがんばらなくてはとも思います」
いくつもの拙いがまっすぐな文章が、彼ら彼女らがいかに清掃の仕事にプライドをもってやっているか、を教えてくれて、目頭が熱くなった。
この本は『新幹線お掃除の天使たち』(遠藤功・著)として8月末に出版された。
萩庭桂太にこの話をすると、エピソードを語るだけで目をうるうるさせて「取材したい」と言ってくれた。この男は以前、連続テレビ小説「てっぱん」のあらすじを解説するのにも泣いていたことがある。意外に情にもろい。
かくして彼は3日間もこの取材に費やしたのであった。
-
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太