テッセイの仕事を支えているのは、経営のやり方だけではない。スタッフがスタッフを見守る、家族のようなシステムづくりである。

 チームには現場リーダーである「主任」がいる。なかでも女性主任の「おかん」的存在感がすごい。

 17年目のMさんは、黒縁眼鏡が印象的な、茨城県出身のおかんである。

「ミーティングで順番に『スマイルテッセイ』という仕事磨きの本を読むんですが、ある若い男性スタッフが自分が読む番になると『お腹が痛い』と言うんです。『帰る?』と言うと『大丈夫です』と言う。みんなの前で読むのがつらい、あがり症だったんですよ。それで、私が言うよりもと、36、7歳の以前あがり症だった男性をマンツーマンでつけたんです。1週間後には、つっかえながらでも、なんとか読めて。読み終わったとたん、拍手が起こりましたよ。それから彼はとても元気になって進んで人に声をかけられるようなスタッフになりました。人は十人十色ですから。私たちはみんなのお母さんみたいな存在になったらいいのかなと思います」

 待機所での食事は、当日決められる自分の番号のところへ座るというシャッフル方式。柿崎さんが言った。

「仲のよい特定のグループをつくらない、というのも、もめ事がなくなる秘訣です。人間には好き嫌いがあるけれど、みんな同じ気持ちで、みんなでがんばる。それが集団でひとつの仕事をするときに、仕事を均質にするのです」

 スタッフたちが、壁に一語ずつやる気を示す言葉を書いているのも印象的だった。

「鬼姫主任になる! うっとうしい主任になる!」

 そんな言葉に、仕事への厳しい覚悟とプライドが見える。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太