「日本の新幹線の清掃サービスがすごいらしい」

 そんな噂は徐々に世界に広がり、なんとフランスから中国からと、視察団がやってくる。カリフォルニア州知事のシュワルツェネッガーさんまでがやって来た。皆、口を揃える。

「新幹線そのものよりも、このサービスを売ってほしい」

 私たちが撮影に訪れた日も、CNNが取材に来ていた。その日、車両を掃除していたSさんはスピードと丁寧さが1、2位を競うだろうと言われている男性。

 レポーターには東日本大震災で外国人ジャーナリストとしては一番乗りしたというポーラ・ハンコックスさんがいらしていたが、彼のあまりのスピードに大変驚いておられた。

 萩庭桂太は午前中×3日間の最終日、1人で撮影に出かけていった。

 そして「時間内にホームの安全柵まで一本ずつ掃除する姿にうるっと来た」と言って帰ってきた。

 私が取材で一番うるっと来たのは、当初この会社に入ることを親類縁者には隠していたという女性のこんなエピソードだった。

「清掃の仕事と言うのがなんだか恥ずかしかったのです。でも、ホームでお辞儀しているところをたまたま親戚に見られてしまって。その後『立派なお仕事じゃない。なんで隠していたの』と電話がかかってきて、本当にそう思ってくれたみたいで、嬉しくて。やっと誇りがもてたんです」

 人が、ある年齢で、今までの自分にはなかった新しい仕事に「誇りをもつ」まで。その一人ひとりのストーリーが、あのホームでの一礼に込められている。

 10月1日。テッセイは社名変更し「株式会社JR東日本 テクノハートTESSEI」に生まれ変わった。

 同日新しくなった東京駅とともに、そのおもてなしの心は、もっともっと、世界に羽ばたいていくことだろう。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太