例によって例のごとく「きれいな新人モデルがいる」という噂を聞きつけた萩庭桂太が、コンポジットを取り寄せて見ると、非常に大人顔をした17歳の女の子であった。

 名前は、美歩子。

「きれいだなあ」

「誰かに似てますね」

 すると、ヘアメイクのSHIGEさんが「あら、あなたたち、おばかさんねえ。気づかないのかしら」という顔で言った。

「小林麻美よ」

「あーっ」

 萩庭桂太は1人で痛く合点がいった顔をしている。

「ファンだったんだよー、小林麻美。そうかー。それで今回、すぐ電話したのかー。そうかー。好きな顔って変わらないのかー」

 しかし萩庭桂太はもともと薬師丸ひろ子のファンであったと周囲に公言していたのでは……。あまりにも好みに一貫性がないではないか。だがそこを突っ込んでもしょうがないので、放っておくことにした。

 だいたい、「好みの顔」ということになれば、私だって一貫性がない。ちなみにこれまで実際に会った芸能人で一番好きな顔は伊藤英明である。たかだか20分しか時間がなかったのに、途中でぼーっとしてしまい、マネージャーに「なんか聴いてください」と怒られた。木村拓哉の顔も嫌いではない。あの人は目がよい。姜尚中も悪くないと思う。あ、あの人の場合は声かも。

 とにかくそれは「あれも食べたい、これも食べたい」に通じるみっともない欲望の乱打である。が「食べられない」のだからもっと空しい。この連載にもそんな綾小路きみまろの言う中高年的な匂いが漂って来た事実は否めない……。

 美歩子ちゃんは若い頃の小林麻美の感じに似てはいるが、まだ17歳なので、あの退廃的なムードはない。でもカメラを向けられるとちょっとアンニュイなフランス人女優みたいな表情をした。

  • 出演:美歩子

    1995年東京生まれ。イギリス人の父と日本人の母をもつハーフ。
    177センチの長身と、グレイッシュブラウンの瞳をもつ期待の新人モデルである。
    http://www.image-tokyo.co.jp/model/works/21

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:SHIGE
衣装協力:BIGI wbワンピース ¥58,800
撮影:萩庭桂太