今回は久々のイケメン登場である。しかもちょっとチャラ男っぽくて心が折れやすそうな、私がはまりやすいタイプである。

 いや、こういうタイプは好きではないのだ。断じて好きではないのだが、気がつくとついつい言う事を聞いてしまっている……、という男って、世の中にはいるものなのである。

「だってたまには人参ぶらさげないと、森さん、がんばらないからさー」

 こんなに頑張っているのに萩庭桂太はそんなことを言う。まあなんでもいいや、イケメンに会えるんだもの。歳をとると、別に本気でどうこうなんてちっとも思わないのだが、会えるというだけでワクワクするものなのである。

 「それがおばさんなんだよー」と、おじさんの萩庭桂太は言う。

 ふん、違うのよ。20歳のイケメンを見つめるとき、女は20歳に戻るものなの。

 その日、件の彼はプロダクションの一室で演技指導を受けているというので、我々はそこを尋ねることになった。

 コン、コン。

 ノックして静かに入ると、ウルトラビーム光線が出そうなくらいの目線で、華奢な男の子が先生の話を食い入るように聞き、うなずいていた。なんでも、彼は自ら望んで演技指導の個人授業を受けているのだという。

「ああ、その台詞は、あんまり黄昏れないで。たいてい誰でも回想して独白する台詞って好きなんだよね」

 先生の指導の一つ一つを、消しゴム付きの懐かしい鉛筆で台本に書き込む彼。

 きゅん。

 ふと目を落とすと、スタッズのついた黒いバスケットシューズから、つかめそうな細い足首が覗いていた。

 きゅんきゅん。

 男の細い足首にひかれるなんて、私だけ?

 というわけで、今回は、20歳のイケメン俳優、矢野聖人さんなのである。

  • 矢野聖人

    1991年東京都生まれ。蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸』のオーディションで8523人の応募者のなかから選ばれ、デビュー。その後、2011年『身毒丸』を好演。その他ドラマ『GOLD』『リーガル・ハイ』、映画『天国からのエール』などで活躍し、現在は『GTO』に出演中。体脂肪率4%のボディが女性誌でも話題を集めている。

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太